8月21日11時41分配信 医療介護CBニュース
東京都小金井市の静かな住宅街。セミの声がそこかしこから聞こえる中を歩いていくと、デイホームと保育園がひとつになった「地域の寄り合い所 また明日」の“長屋”が見えてくる。
「また明日」は2階建てのアパートを改装し、1階部分、5世帯分の部屋の壁を取り払い、認知症対応型通所介護施設と認可外保育施設にしているほか、地域の交流スペースにもなっている。
長い部屋の奥では、お年寄りがゆっくりと体操をしている。その傍らでは、揺りかごの中の赤ちゃんから就学前までの園児が、職員や、夏休みで遊びに立ち寄った小学生たちと元気に過ごす。
この“長屋”を切り盛りするのが、管理者で介護福祉士の森田和道さんとNPO法人代表で保育士の真希さんの夫婦だ。森田和道さんは「幼稚園と同じ敷地内にある介護施設もあるが、仕切りがあるかどうかで違うのでは。ここの雰囲気は独特なのかもしれない」という。
デイサービスは1日に平均7人ほどが利用する。保育所の定員は8人だったが、子どもが地域の保育園に入り切れなくて困っていたお母さんの要望もあって、12人に増やした。
お年寄りと小さな子がひとつの空間にいるが、一緒になってするのは、朝一番の「おはようございます!」のあいさつと、園児が散歩する時に、お年寄りが行きたいと思えば付き添いの職員と共に付いていくことくらいだという。同じ空間にいるだけで十分だというのだ。「ずっと一緒にいれば、お互いに疲れてしまう」。
お年寄りにも介助し過ぎることなく、なるべく自分でできるようにサポートする。自宅で座りっぱなしのお年寄りが、子どものそばに寄っていって「何しているの?」と声を掛けることもある。転倒しないように職員が見守るが、まずはお年寄りの心が動くことが大切なのだそうだ。
ベイブレード(べーごま)で子どもとお年寄りが遊ぶ。お年寄りがうまくできないと、子どもが遊び方を教えて、お年寄りがその子をほめる。
子どもたちも、お年寄りがそばにいることが普通だと思っている。一緒にいるとその子の動きも変わり、おばあちゃんがそばを通るときは、走り回っていても立ち止まったり、通り道を空けるなど、気遣うのだという。
時には、公園やサークルに居場所を見つけるのかちょっと難しい、子育て中のお母さんがやってくるという。地域の交流スペースとしても機能しているのだ。
森田和道さんは言う。「誰もが与えられるだけでなく、誰かに充足感を与えられる存在ではないか。そんな支え合いが地域社会に広がっていけばいい」。「また明日」は、そんな地域社会の結節点なのかもしれない。