大雪:能登など生活直撃 交通網混乱、休校、停電… /石川

1月27日18時2分配信 毎日新聞

 ◇スリップ事故多発、バス運休も
 県内は26日も断続的に雪が降る荒天となった。25日に8年ぶりに大雪警報が発令された能登南部は積雪による倒木や道路の大雪で交通網が混乱し、大きな影響が出た。また七尾市内などの小中高校計33校が臨時休校し、延べ約6500世帯が停電。県によると、七尾市能登島で民家1棟が倒木のため一部損壊する被害が出た。【澤本麻里子】
 ◇「能登南部」に一時警報、七尾で41センチ--8年ぶり
 金沢地方気象台によると、積雪は平野部の七尾市で午前8時に41センチを観測した。
 午前11時現在の各地の積雪は金沢市10センチ、輪島市16センチ、珠洲市23センチ。山間部では、白山市吉野41センチ、加賀市山中温泉栢野町36センチ。
 県教委によると、七尾市の全小中学校計22校と中能登町の全小中学校9校、同市の県立田鶴浜高校などが臨時休校。羽咋市と志賀町の一部で午後からの授業を打ち切り、羽咋市立羽咋小学校や県立宝達高校など計9校が始業時間を繰り下げた。
 七尾市内の小中学校は通学路の確保が難しく、27日も休校する予定という。
 県警交通企画課によると、25日午前9時~26日午前9時に路面凍結によるスリップが原因とみられる事故が56件発生し、4人が軽いけが。また積雪のため運転免許の路上試験が一部中止となった。
 県新幹線・交通政策課によると、北鉄能登バスが七尾営業所管内の全線で運転を見合わせたほか、能登島交通の路線バスが午前中全便運休。輪島港と舳倉(へぐら)島を結ぶへぐら航路も欠航した。
 ◇「ごみ出し控えて」 七尾市では収集に支障
 北陸電力によると、26日午後1時現在、七尾市や中能登町、穴水町などで約1200世帯が停電。七尾市雪害対策本部の調べでは、積雪のため各地で倒木が発生。高圧線が損壊し午前9時現在、能登島や田鶴浜地区など市内で計156世帯が停電しているという。
 また同市雪害対策本部によると、市内の県道、市道などで倒木による通行止め区間が9カ所発生しており、ごみ収集車の巡回が遅れるためごみ出しを控えるよう防災無線で市民に要請した。
 金沢地方気象台によると、27日は昼過ぎまでは雪か雨が続くが、夕方からは回復して気温も上がる見込みという。

<交通事故>事故で車の外へ 路面凍結で転倒、ひかれ死亡--福岡・筑紫野

1月24日20時10分配信 毎日新聞

 24日午前2時15分ごろ、福岡県筑紫野市永岡の国道3号バイパスで軽乗用車3台が絡む多重事故が発生、運転していた人たちが車外に出て話していたところ、男性1人が凍結した路面に滑って転倒、スリップした後続のトラックに首などをひかれ、搬送先の病院で死亡した。

 県警筑紫野署によると、死亡した男性は同県立花町、自営業、石井英徳さん(62)。転倒後にあおむけで安静にしていたところに、トラックが通りかかったという。

 同署はトラックを運転していた同県春日市の運転手、奈須正人容疑者(59)を自動車運転過失傷害容疑で現行犯逮捕し、詳しい経緯を聴いている。現場は片側2車線の高架上だった。

愛媛・松野町議会、町観光公社をそれぞれ指定管理者に

1月27日8時5分配信 産経新聞

 愛媛県松野町議会は定例会最終日の26日、森の国ホテルなど滑床観光施設の運営は「ジェイアール四国アーキテクツ」、淡水魚水族館「おさかな館」など河川公園施設は「町観光公社」をそれぞれ指定管理者とすることを可決した。

 町は両施設などをこれまで年間6300万円で町観光公社に経営委託していたが、町財政の逼迫(ひっぱく)で支出の圧縮を余儀なくされていた。年間の指定管理費をアーキテクツは1300万円、町観光公社は3000万円を提案。管理費は3月議会で審議する。

ダルビッシュ下半身ユニホームで本気投げ

1月23日9時59分配信 日刊スポーツ

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(22)が、早くも「超本気モード」に突入した。22日、2軍施設のある千葉・鎌ケ谷の室内練習場で今季4度目のブルペン投球を行い、下のみユニホームを着用し、初めて捕手を座らせて55球。非公開だったが、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)本番の使用球、専用ロージンバッグを使い、変化球を交えるなどの念の入れよう。代表入りが確実な3月のWBCに向けて、2月11日の阪神との練習試合(沖縄・宜野座)では使用球で“先発予行演習”を行う。
 着替えたダルビッシュがさっそうとブルペンに向かった。鎌ケ谷の室内練習場から、黒色のウエアのままいったん姿を消し、隣接する寮に戻ると、下だけ白色のユニホーム姿で再登場した。「ユニホーム? (試合に)半ズボンで投げるわけじゃないし、気持ち悪いからこれで投げないと」とこだわりを説明した。
 実は、プロ野球選手会の要望で12月1日~翌年1月31日まではオフ期間と明確化され、原則、ユニホームが着られないことになっている。球団を通じ、慌てて着用許可の申請書を提出。そこまでこだわったユニホーム着用での電撃ブルペンこそが、WBCへの本気度だった。
 報道陣には異例の非公開ブルペンとなった。関係者によると「集中したい」という理由のほか、申請済みとはいえ、ユニホーム姿を堂々と公開したくない思いもあったという。ダルビッシュは「非公開? 自主トレなんで」と言葉を濁したが、選手会に配慮した約30分のブルペン入りだった。
 全防具を着用して捕球した7年目尾崎によると、直球以外にツーシームなど3種類の変化球を交え、立たせて30、座らせて25の計55球。「遊び」のフォークボールも投じたという。ダルビッシュとは初コンビで比較はできないが「ピリピリした感じではないけど『キャンプはすでに始まっている』と言っていたし、意気込みを感じた。直球は140キロくらいだと思う」と振り返った。
 実はブルペン入りはこのオフ4度目。年明けから中旬まで宮崎自主トレですでに3度入っていたが、いずれも立ち投げ。この日、捕手を初めて座らせたが、こだわりはユニホームだけではなかった。球はオフに使い続けているWBC球を使用。「もともとボールの感触どうこう言うのはないんで、感触は一緒だと思う」と話したが、尾崎には「ボールが動く」、「フォークのスピードが速くなる」などの微妙なズレを漏らしていた。
 滑り止めのWBC専用ロージンバッグも持参し、感触を試した。左右とも打者を立たせ実戦も想定した。各国のWBC代表候補メンバーは「見ていない」と話したが、自身の調整に抜かりはない。「仕上がり? 去年より早いのは間違いないです。球の調子? そこそこの力で投げたけど、いいんじゃないですか」。レッドソックス松坂、楽天岩隈と並ぶ先発の大黒柱が、急ピッチで仕上げに入った。【村上秀明】

[特集]ミニプロジェクターの実力は?<後編> バッテリー非搭載2モデルを試す

1月21日12時45分配信 BCN

 手のひらに乗るほどの小さなプロジェクター、ミニプロジェクターが昨年秋以来、続々と登場している。連載「ミニプロジェクターって一体何者? レビューで見る画質と使い勝手」第2回では、その中で充電式バッテリーを搭載する3モデルの使い勝手をチェック。最終回となる今回は、電源にACアダプタを採用した2モデルをレビューする。

 使用したのは、海連の「KR-PRO920M」とキャストレードの「CV-MP01」。いずれも前編同様、画面サイズはA3で、iPod touchに保存した風景写真を部屋を暗くして出力した。なお、写真は、F値とシャッタースピード、ISOを統一し、ホワイトバランスはオートで撮影した。

●画面の水平反転や音量調節など各種機能が充実――海連「KR-PRO920M」

 海連の「KR-PRO920M」は、使い勝手を高めるさまざまな機能を備える。たとえば、他のミニプロジェクターにはない、スクリーンの前面と背面どちらからでも投影できる画面の「水平反転機能」を搭載。向きを気にせず置けるので便利だ。画面は、本体上面の音量調節ボタン「+」「-」を同時に押せば切り替わる。動画を見ながら音量調節も可能。画面上に音量レベルがバーと数字で表示されて見やすい。

 大きさは目覚まし時計程度。ただ、カバンなどに入れて持ち運ぶことを考慮すると、もう少し小ぶりだとうれしい。カラーはブラック。

 D-sub15端子、電源端子、AV端子とファンは左側面にまとめられており、ホコリを防ぐゴム製のフタ付きのため、見た目もすっきりしている。前面はレンズの周囲に焦点調節ダイヤルを備え、レンズカバーが付属。上面にはタッチセンサー方式の電源ボタンと音量調節ボタン、スピーカーを搭載し、底面には三脚穴と滑り止めのゴム製の足が4つ付いている。パッケージ内容は、プロジェクター本体、ACアダプタ、AVケーブル、三脚など。

 スクリーンに投影した画面は、他のモデルと比べるとやや暗め。焦点調節ダイヤルは、操作時にレンズから投射される光を手で遮ってしまい、画面が確認しづらかった。また、タッチセンサー方式のボタンは見た目はよいが、押した感覚がないので使いにくい。駆動音は、試用したモデルの中でもっとも大きく気になった。

●かわいいキューブ型の小さなボディ――キャストレード「CV-MP01」

 キャストレードの「CV-MP01」は、愛らしいスカイブルーとホワイトのツートンカラーがポイント。ボディはキューブ型でまるでおもちゃのよう。内部の熱を逃がすため、前面と左右の側面には格子を設けている。この格子が円や楕円の形をしているので模様に見えて、なんともキュート。

 前面のレンズ周囲には焦点調節ダイヤルを搭載。上面は電源ボタンとスピーカー、右側面は電源端子、AV端子に加え、音声調節ダイヤルを備える。三脚穴はないため、そのまま置くと本体を固定しにくい。別売りの滑り止めのシートを下に敷くか、クリップの付いた携帯電話用の三脚を使用するとよいだろう。パッケージ内容は、プロジェクター本体、ACアダプタ、AVケーブルなど。

 スクリーンに投影したところ、茶色がかったセピアっぽく映し出された。焦点調節ダイヤルは海連の「KR-PRO920M」と同様、レンズの周囲に装備されているため、同じ理由で使いにくかった。また、ダイヤルが固めなので、微調節はできるものの回しにくい。駆動音は海連の「KR-PRO920M」より小さめだった。

●動画の視聴には音量調節機能が便利 “ミニ上映会”がオススメ

 2製品とも、音量を自由に調節できる点は評価できる。また、放熱処理がうまく施されており、本体がほとんど熱をもたないのもよい。ただ、前編でも指摘したが、焦点調節ダイヤルがレンズの周囲に配置されている点は不便と言わざるを得ない。次の製品では、改善を期待したい。画質は、明るさと色の鮮やかさが向上すればより見やすくなる。

 今回は、連載の前編と後編、あわせて計5製品を試用した。正直な感想を言うと、現時点では、画質面で、ビジネスシーンでの利用は厳しいかもしれない。試しに各モデルでテロップ付きの動画を出力したところ、文字部分が読みにくかったからだ。

 ただ、いずれも写真はそれなりに楽しめる画質だったので、プライベートでの“ミニ上映会”をオススメしたい。携帯電話や携帯オーディオと接続し、保存した静止画、動画を大画面で視聴できる。部屋を暗くして雰囲気ある演出をすれば、家族や友人もきっと楽しんでくれるはず。

 比較した5モデルの基本性能は、それほど違いがない点もあれば、大きく異なる点もある。各モデルの得意、不得意を見極めた上で最適な一台を選ぼう。(BCN・井上真希子)

三遊亭円楽 同じ日に両手首バキッ!ボキッ!

1月20日7時0分配信 スポーツニッポン

 07年2月に引退表明した落語家の三遊亭円楽(76)が、両手首を骨折する大ケガを負っていた。20日発売の女性誌「週刊女性」(主婦と生活社)が報じている。

 円楽は昨年末に自宅内の階段で転倒し、片方の手首を強打。さらに同日中に再び階段で転倒し、もう一方の手首を床に打ちつけたという。家族によると、円楽は当初、骨折したとは思わず病院には行かなかった。だが、年明け以降も痛みと腫れが引かないため、都内の病院で診察を受けたところ「両手首の骨折で全治約1カ月」と診断された。19日も診察を受け、順調に回復しているという。円楽は05年10月に脳梗塞(こうそく)で倒れ入院。07年11月には胃がん、昨年4月には肺がんの摘出手術を受けている。

長島惜しい!でも日本男子8年ぶり2位

1月19日7時1分配信 スポーツニッポン

 スピードスケート世界スプリント選手権最終日は18日、モスクワで行われ、男子の長島圭一郎(26=日本電産サンキョー)は総合2位で、01年総合2位の清水宏保以来日本男子8年ぶりの表彰台に上った。五百メートル2回目で34秒91の1位となり、総合2位からトップに浮上したが、千メートル2回目で1分10秒19の8位と失速。139・720点で、シャニー・デービス(米国)に0・160点差で逆転され、83、87年に勝った黒岩彰以来の総合優勝はならなかった。女子の日本勢は吉井小百合(24=日本電産サンキョー)の総合7位が最高だった。

 最後の千メートルでゴール直後、電光掲示板に目をやった長島は、サングラスを取ってもう一度、目を凝らした。1分10秒19。優勝に必要なタイム1分9秒86に届かず「力不足だった」と悔しがった。

 最初の五百メートルでリンク新記録の34秒91をマークし、総合1位に浮上した。千メートルでは最大のライバルだった李が1組前で転倒し、黒岩彰以来日本人2人目の総合優勝の期待が大きく膨らんだ。。しかし、氷の補修で待たされたうえに精神的な影響もあった。スタートで両脚がぶつかる小さなミスがあり、3種目目までの抜群の伸びやかさを最後に欠いた。「4本そろえて本物」との言葉に実感がこもった。

 それでも日本男子8年ぶりの表彰台だ。近年、清水、加藤ら日本の短距離陣は五百メートルに強化を絞る中、長島は「両方滑れてこそスプリンター」と五百メートルと千メートルの両立にこだわってきた。2日間で五百メートルと千メートルを各2本ずつ計4本を滑る今大会への思い入れは人一倍強い。初出場から22位、9位、5位と力をつけ、ついに表彰台に立ち「現状維持ではない。やっていることは間違っていない」と充実感も大きい。来季のバンクーバー五輪へ向けて確かな手応えをつかんだ。

滑落:雪上訓練で会社員がけが--富士山5合目付近 /山梨

1月18日13時2分配信 毎日新聞

 17日午後0時40分ごろ、富士吉田市上吉田の富士山5合目(標高約2300メートル)付近で、埼玉県日高市横手2、会社員、川上岳宏さん(41)が、アイスバーン状の斜面を約20メートル滑落した。県警ヘリで病院に運ばれたが、左足骨折の可能性もあるという。
 富士吉田署の調べでは、川上さんは山岳会メンバー29人と5合目の山小屋「佐藤小屋」を拠点にした雪上訓練に参加。雪中に穴を掘り、ビバークの訓練などを行っていたが、バランスを崩して転倒したとみられる。【田上昇】

バランスある規制が国民を守る~特集「医療界・PMDAトップ対談」(1)

1月17日14時14分配信 医療介護CBニュース

 薬害肝炎問題をめぐって、原告団と国や製薬企業との和解や、再発防止のための改善策の検討が進む中、医薬品行政の主要課題は、ドラッグ・ラグの解消から、承認後に市販された医薬品の安全対策へと移ろうとしている。この流れの渦中にあるのが、開発された新しい医薬品、医療機器などを審査・承認して世に送り出し、副作用が起きた場合の情報収集などを行っている独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)だ。日進月歩の医学・医薬研究開発を、さまざまな制約のある実社会に適応できるよう調和させていくという“橋渡し”役を担っている。そんなPMDAには、ドラッグ・ラグ解消のために審査員を増員するという課題が国から出されているものの、これまで国民から見えにくい存在だったPMDAには、「人手不足で審査員が夜中まで働き通し」「申請しても何か面倒なことを言われる」といったマイナスイメージも流布している。
 こうした中、PMDAと臨床や教育の現場の人材を交流させることで、双方の人材育成と組織活性化を図ろうと、今年度にPMDA理事長に就任した近藤達也氏(元国立国際医療センター病院長)が、大学やナショナルセンターなどのトップと対話を始めた。その中では、臨床研究から医師養成など今の医療界がはらんでいるさまざまな問題にまで話が及んだ。こうした問題に対し、トップは何を感じているのか―。毎週土曜の連載で、6回にわたってお届けする。(熊田梨恵)

【今回の対談者】
国立循環器病センター総長 橋本信夫氏

 近藤氏と橋本氏は同じ脳神経外科領域が専門で、共通の話題も多い。今回は臨床研究の発展を阻害しているシステム的な問題とその解決策のほか、脳外科医の専門性や適正数、PMDAとアカデミックの連携などに話が及んだ。

近藤 橋本先生は世界的な脳神経外科領域のトップリーダーとして長く活躍しておられます。Scoville賞【編注】を世界脳神経外科学会から贈られたり、海外からは「Master of Neurosurgery」と賞賛されたりしていらっしゃいます。この4月から国立循環器病センターの総長になられましたが、いかがですか。PMDAに対する先生の要望もお聞きしたいと思います。PMDAのシステムには画一的な面もあるとは思いますが。

【編注】世界脳神経外科学会が4年に一度、脳神経外科学領域のアートとサイエンスの発展に寄与した医師1名を表彰する賞

■「無駄」にしないためのシステムが「無駄」を呼ぶ
橋本 わたしが国立循環器病センターに来てあらためて思ったのは、厚生労働省などから出ている研究費の使い心地が悪く、現場での数々の問題が研究費の運用システムをつくる側に理解されていないということですね。例えば、3年間の研究費で医療研究機器を買ったとします。でもその機器は3年間ぐらいでは壊れません。修理が必要になるのはその前に買ったものです。しかし、それが研究に必要な機械だったとしても、その研究費では修理できず、研究が大きく頓挫することさえあります。そういう当事者でないと分からないさまざまな不満があります。なぜ改善できないかというと、研究費の仕組みをつくる側と運用する研究者の間にフィードバックのシステムがなく、現場での問題はそのまま据え置きとなってしまうからです。
 研究においては、中間結果が出たある段階で、研究の方向を変える必要性が出てくることがしばしばあります。むしろ想定外の中間結果が出て方向を変えるぐらいの場合の方が、素晴らしいものが生まれる可能性があります。しかし、現在の研究費の運用制度では途中で方向性を変えることはほとんどできません。すごいことになりそうだから方針転換したいと思っても、最初に提出した申請内容以外の機器は買えないとか、とても不合理です。もちろん、申請課題の目的と方法などが審査された結果、研究費は交付されるものですから、運用上コントロールは必要です。しかし、無駄を出さないためのシステムが壮大な無駄を呼びかねません。また、コントロールのシステムが大きな可能性の芽を摘む可能性があります。これらの事実も認識して今後の研究費の在り方を考える必要があると思っています。

近藤 研究は思わぬところで発見や発明が出てきます。そういうことを認める仕組みがあるといいのですが、今のシステムはあまりにも行政的で規制がきつ過ぎるところがありますね。

橋本 例えば、研究費では申請以外の備品を買ってはいけないと言われているので、優先度としては高くない消耗品を買わざるを得なくなることがあります。研究の推進に新たに機器が必要になっても、50万円の機器さえも買えない、仕方なく50万円分のディスクを買わざるを得ないなどという話を聞きます。実にもったいないことです。

近藤 現実に起こっている無駄ですね。

橋本 国立循環器病センターでは、循環器疾患の臨床と基礎研究の両方が行われています。大学のようなベーシックサイエンスでなく、臨床に近い研究をやるべきだし、できる環境があります。第一線で行われている臨床と研究をお互いにフィードバックしていくのも、ナショナルセンターに与えられた使命だと思っています。ただ、皆あまりに余裕がなくて、そうしたいと思いながらもできていません。臨床医は患者さんを診る以外に膨大な書類作成や本来の医師業務以外の作業で忙しく、研究者も申請書類や研究報告書、研究費使用関係の書類などの雑多な事務作業が多く、自分自身の臨床や研究に忙殺され、いわゆる「橋渡し研究」に手が回らない現状があります。
 特にナショナルセンターは国立大学に比べても書類が多く、申請手続きなどが煩雑で大変です。事実、わたしがここに来るための新幹線の切符も、下車時に「無効印」を駅員に押してもらい、業務内容の報告書と共に提出する必要があるほどです。一事が万事そうで、それだけで医師、研究者の疲労困憊(こんぱい)の原因の一つになっていると思います。医者が医者として、研究者が研究者として仕事できる環境に少しでも近づけるよう、できる改善から少しずつ進めています。

近藤 日本はさまざまな面で恵まれている状態にあるのに、もったいないですね。飽食の時代に“メタボ”になっているようなものです。循環器病センターでは機器開発もされていますが、そこはいかがですか。

橋本 医療機器を早く承認していけるようにすることの必要性を痛切に感じています。医薬品と医療機器の最大の違いは、医薬品は完成したものについて、「安全性」と「有効性」が証明されて使ってよいとなるものですが、医療機器は普段われわれが現場で使う必要があるものなので、そもそも「有効」であることが前提です。注射針が薬液を注入するのに有効かどうかなんておかしい話で、それよりも体に触れて大丈夫かといった「安全性」に大きなウエートを置いて迅速な審査をしていただきたいと思います。そのためには一般健康器具と異なり、医療機器は本来必要だから開発されたものだという基本的な共通認識が必要です。また、医療機器のマイナーチェンジに関して、その都度申請・認可しないといけないのであれば、これが機器開発と臨床使用のリミッティングファクターになってしまいます。例えば、血管内デバイスの進歩は速いので、審査を始めて安全性のデータが出るころにはもう新しいものができていたりします。新しいものを承認申請となると、いつになっても市販化されません。どこまでをマイナーチェンジというかも考えていただければと思います。
 
近藤 この辺は大事なことです。わたしも使う側にいましたが、使う人によって上手に使う人もいれば、下手な人もいる。下手な人を前提とした「有効性」の審査じゃ困るんですよね。マイナーチェンジに関しては業界と話をしながら少しずつ広げていこうとしています。日本の技術を高めるためにも、もっと判断力を高めて審査スピードを上げていかないといけませんね。

■「木を見て森を見ず」の規制は全体のロスに
近藤 その規制という部分なのですが、昨年4月に「東アジアレギュラトリーシンポジウム」というものが東京であって、その冒頭にあいさつをしました。その時に「PMDAは規制当局なんだな」としみじみ思いましたね。もともと米食品医薬品局(FDA)は、欧州から米国に怪しげな薬がどんどん入ってきたので、それを水際でブロックするためにできたそうです。日本人に毒入りギョーザを食べさせちゃいけない、薬の安全でもそう。規制というのは、あらゆる領域で日本国民をどう守るかというもので、団体や組織の利権を守るものではない。規制緩和はその目的に沿って不必要なものを外すのであって、一部の特権階級を守るものではない。自分にその感覚が意外になかったし、社会の中で理解されていないと思います。

橋本 マスコミの影響も大きいと思います。例えば「こんにゃくゼリー」。あれを喉に詰まらせて亡くなった方がいて、マスコミがセンセーショナルに取り上げて、一時製造・販売が中止されました。でも、もちを喉に詰まらせて亡くなる方は年間1000人以上いるんですよね。確かにサイズや硬さなどの問題はあったでしょうが、それ以上にもちを詰まらせて亡くなる方の方が多く、家の中で転倒して亡くなる人だっている。全体のリスクを見通した、「ゼリーだけでなく、もちなどもっと危ないものある。もっと気を付けて」というアピールも要るでしょう。一部の特殊なケースが騒がれて、細かい部分に規制を作ってよしとしてしまうことが、全体のリスクを下げているかというと、必ずしもそうでない。ワクチンなんかもそうだと思いますが、ある事例がセンセーショナルに報道されて、基本的なところにある膨大なメリットが先送りされてしまうということがあります。機器開発においても同様で、過剰反応で機器開発が遅れると全体として大きな損失を招くことになります。非常に慎重な判断はもちろん必要ですが。

近藤 判断のコモンセンスということですね。筋を通した判断が必要です。ささいなことで社会がひずんでしまうことがありますから。

■アカデミズムの影響力を
橋本 話は変わりますが、医療機器開発に関する面白い話があります。脳卒中の急性期医療に使われるt-PA(血栓溶解薬)がありますが、それが出る前に岩手医科大の小川彰先生(学長)が、MELT Study(超急性期脳梗塞に対する局所線溶療法の効果に関する多施設共同ランダム化比較試験)を始められました。初期の脳虚血変化はCT上、early CT signの出現の有無で判断します。研究グループはCT画像の質にばらつきがないか、全国の研究参加施設のCT画像を集めてチェックしたそうです。そうするとほぼ半分の施設のCTの画質が不良で、初期虚血変化を診断できるものではなかったそうです。このころ普及し始めていた最先端のマルチスライスCTでは、薄く早く撮ることを重視していたため、画質が置き去りにされていることを使用する当事者自体が理解できていなかった。一見きれいな画像が重要な判断、すなわち診断をするのに堪えられるものではなかったということです。このことを明らかにした岩手医科大放射線科の佐々木真理医師らが、さらに話を展開しました。他施設スタディーをするときには、診断機器の標準化が必要です。しかし、医療機器を売る側からすれば、セールスポイントは「うちのは他と違う」という差別化です。MRIは機種に加えて撮り方が多種多様です。佐々木医師らのグループは、それでは本当の多施設共同研究はできないと、MRIなどの撮像標準化の必要性をメーカーに訴えたのです。その結果、メーカーは自社の診断機器が標準化対応モデルであることをセールスポイントにするようになりました。研究者がメーカーの視点・方針を変えさせた、という非常に意味のあるアクションであったと思います。

近藤 それは素晴らしい話です。まさにアカデミズムがすべきことで、ほかのことにも応用できます。今の学会は見えにくいですよね。例えば、薬害など現実にいろんな問題が起こったとき、責められるのは厚労省、PMDAや製薬会社です。アカデミズムも判断基準には大きくかかわっているはずなのに、何か起こると消えていなくなってしまう。学会はもっと責任を持って発言し、行動していただきたいと思います。学会はいいことを言っていますが、いまいち国民へのインパクトが弱い。コンセンサスの取り方が不十分だと思うのですが。今の脳神経外科学会は6000人ほどでしたかね?

■日本独自の脳神経外科医適正数を
橋本 そこも問題なのです。「脳神経外科とは何か」という定義をしっかりしない中で、数の議論がなされてきたことが問題です。6000人というのは現在までの専門医登録総人数で、アクティブな脳神経外科医は約3500人です。
 欧州の脳神経外科は専門医数を厳しく絞り、脳神経「外科」に特化するようになっています。かつて自分たちが行っていた脳血管造影は放射線科に譲り、その結果、血管内治療法は放射線科の領域になりました。欧米においては脳神経外科がカバーしていた範囲から、放射線診断と治療、神経外傷、腫瘍医学などを放棄し、手術に特化する方向を選びました。その結果、米国でも、心臓内科医が冠動脈ステント留置術の延長として、頸動脈ステント留置術を行っています。米国でステント術を行っている1万人の心臓内科医が生き残るため、頸動脈にまで進出するというのです。わたしが「心臓内科医や放射線科医が頸動脈ステントをしている最中に、患者が脳梗塞を起こしたらどうするのか」と聞くと、米国の脳神経外科医は「スマートな心臓内科医は優秀な脳神経外科医を友達に持っている」と答えましたよ(笑)。欧米の脳神経外科医療は、頭の中に物があれば取る、血管が狭ければ広げる、というスペシャリストの養成に主眼が置かれた結果、医療の断片化という危機に直面していると警告する米国の指導者もいます。チーム医療と全く逆の方向です。あるドイツの脳神経外科医は「ドイツは方向を間違えた」と言っていましたね。

近藤 日本の脳神経外科医の適正数は、日本独自の基準で考えるべきです。日本の脳神経外科医はかなりつぶしが利いていて、脳神経外科学の基礎研究やデバイス開発だけでなく、救急医療からリハビリまで抱え込んでいて、ドイツの正反対です(笑)。医療の発展に対する貢献は大きいので、良い環境をつくってもらえば、脳神経外科に限らず世界をリードできるポテンシャルはあります。

橋本 脳神経外科医の専門医制度は1967年につくられましたが、数を制限してこなかったということ、研究を重視してきたことが特徴です。例えば、世界的に有名な医学雑誌「JAMA」「New England Journal of Medicine」「LANCET」に掲載される日本人の論文の数は米国の2.2%という少なさですが、脳神経外科の雑誌「Neurosurgery」「Journal of Neurosurgery」になると、臨床、基礎研究共に日本からの論文が15-25%と多くなります。日本の脳神経外科手術のレベルの高さは、いろいろなレベルでの競争があるからだと思います。欧米では、ある種のギルドのメンバーになってしまえば、そこから技量の競争はないに等しいとさえ言えます。この中で若い人たちのキャリアパス、インセンティブをどのように構築していくかが大切だと思います。

近藤 競争が働く仕組みは必要ですね。

橋本 その中でPMDAの大学院連携構想はいいですね。わたしたちの研究の促進にもつながりますし、学位が取れます。また、脳神経外科学会の中に医薬品や医療機器開発から承認に至るプロセスやメカニズムを研究する専門家がいると、われわれの領域での研究開発の大きな力になります。優秀な頭脳を集めて、さらに進化したPMDAになってほしいですね。

近藤 PMDAを医師のキャリアパスの一つとして考えられるようにしています。ぜひ循環器病センターからも来ていただきたいです。研究所に帰って新しく機器を開発するときにも参考になると思います。脳神経外科医の場合、機器開発を経験した方がここに1、2年いて、学会で認可条件や機器開発などにこういうポイントがあるとか、発表していただけるといいですね。わたし自身もよく知らなかったぐらいで、PMDAは学会の中での存在感が薄いです。学会もこの組織を活用してもらうといいのですが。

橋本 学会員も今までPMDAに対しては、研究や開発におけるバリアーという印象を持っていることを否定できないと思います。PMDAは相談できる相手というより、「NO」と言われる“壁”という印象の方が強いように思います。これからはバリアーと思わず、PMDAのシステムを積極的に利用すると、学会のためにもなりますね。

近藤 “壁”はまずいですね(笑)。PMDAの仕組みを紹介し、相談に乗るという仕組みはできると思います。内科方面は循環器とかで少しずつ始めていますが、脳神経外科に関してはちょっと手薄です。でも、学会に広げていくというのは大きなポテンシャルになるので、ぜひやっていきたいですね。

橋本 ぜひともよろしくお願いいたします。

【略歴】
橋本信夫氏
1973年 京大医学部卒業
93年 国立循環器病センター特殊病棟(脳血管外科)部長
97年 京大医学研究科教授
2005年 京大医学部附属病院副院長
08年 国立循環器病センター総長

近藤達也氏
1968年 東大医学部卒業
89年 国立病院医療センター脳神経外科医長
2003年 国立国際医療センター病院長
08年 独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長

雪下ろし事故:県内で相次ぐ 4件4人死傷 /山形

1月19日12時3分配信 毎日新聞

 高気圧に覆われ、県内全域で晴天が広がった日曜日の18日、高齢者による雪下ろし中の事故が相次いだ。白鷹町と庄内町では、男性2人が、それぞれ屋根から転落して死亡するなど4件で4人が死傷した。今後も積雪が増えるとみて、県警では注意を呼び掛けている。山形地方気象台によると、19日から20日にかけては、冬型の気圧配置となり、県内全域で降雪になるという。
 長井署によると、同日午前9時40分ごろ、白鷹町横田尻、無職、金田紀一さん(67)が雪下ろし中、自宅の2階屋根から約7メートル下の地面に転落した。金田さんはすぐに病院に運ばれたが、胸を強く打っていて大動脈破裂などで死亡した。転落するのを見た近くの男性が119番通報した。
 庄内署によると、同日午後2時20分ごろ、庄内町科沢、農業、阿部寿男さん(77)が玄関前に倒れているのを阿部さんの家族が発見。阿部さんは病院に運ばれたが、約2時間後に死亡した。阿部さんは、雪下ろし中で、自宅2階屋根から約8メートル下のコンクリート面に転落し、頭を強く打ったらしい。
 尾花沢署によると、同日午前10時40分ごろ、尾花沢市新町2、無職、井上和雄さん(81)が、雪下ろし中に2階屋根から足を滑らせ転落、右の胸を打つ軽傷を負った。井上さんは、約4メートル下の玄関屋根に落ち、さらに約3メートル下の約15センチ積雪のある地面に転落したらしい。
 寒河江署によると、午前8時半ごろ、朝日町大谷、農業、川村広志さん(73)が、近くの高齢者宅の物置の屋根で雪下ろし中、ビニール製の屋根が抜け落ち、約3メートル下のコンクリートの床に転落した。川村さんは、右肩を打つ軽傷。川村さんは、地区の人たち50人とボランティアで、高齢者世帯の家を訪れ、除雪作業をしていた。屋根には計5人が乗っていたが、川村さんの足元だけが抜け落ちた。【林奈緒美】