社会福祉法人松竹会(夏目憲永理事長)の障害者支援施設「シーサイド吉前」(豊橋市吉前町、柳田辰治所長)は11日、津波避難用スロープの完成式典を開いた。津波被害が懸念される同施設の外部に新設し、介護者の負担を軽くする設計で入所者や町民の迅速な避難を目的としている。
3階建ての同施設は三河湾から約100メートルの距離にあり、1階玄関の海抜は0・6メートル。南海トラフ巨大地震が発生すると、三河湾には1時間~4時間後に2メートル~3・6メートルの津波が押し寄せるとされている。同施設は、昨年8月に内閣府が発表した被害想定に基づいて対応を検討。自力避難が困難な利用者を1時間以内に高所へ避難させるため、海抜13㍍の屋上へつながる避難用スロープの設置を決めた。
スロープの床面は車イスが滑りにくいように加工。傾斜を緩やかにして7㍍~8メートルごとに踊り場を設けることで介護者の負担を軽くしている。避難者の恐怖心を和らげるため、車イスの目線に沿った目隠しも施した。
昨年の被害想定発表以降、同施設は津波を想定した避難訓練を2回実施した。利用者を3階以上に避難させる内容だったが、車イスの介護者を職員4人が階段で運ぶなど体力的な負担は大きく、1時間以内の避難は不可能と判明。エスカレーター設置や、車で付近の避難所へ向かうことも検討されたが、停電や液状化の懸念などから、車イスに乗って避難できるスロープが最も安全でスムーズな避難が可能と判断した。
施設には、入所者70人、通所者20人が利用しており、同市や吉前町の指定避難所となっている。スロープには非常用のスピーカーが2台設置され、大地震発生時には町民へ避難を呼びかける放送を流す。
完成式で夏目理事長は「職員一同、努力を重ねて利用者の安全を守っていきたい」とあいさつ。柳田所長は「いつ災害が来ても迅速な避難活動が可能な状態にしていきたい」と話した。
同施設は、10月2日に町民参加の避難訓練を実施する。