登山シーズン 中高年の事故に注意 体力づくり忘れずに

6月1日8時0分配信 産経新聞

 ■自信は禁物/疲れる前に栄養補給

 まもなく本格的な登山シーズン。かつては若者が多かった登山人口だが、今では40歳以上の中高年が6割以上を占め、それにともなって転倒や転落などの事故が増えている。安全に登山を楽しむために日頃の体力づくりや栄養補給など事前準備をすることが大切だ。(平沢裕子)

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 ≪下りで脚がガクガク≫

 大自然を長時間歩く登山は、エアロビクスと同じ全身運動。上り下りや荷物の重さが負荷となり、心肺機能や脚筋力が鍛えられ、ストレス解消や体力づくりに効果があるとされる。

 鹿屋体育大学(鹿児島県鹿屋市)スポーツトレーニング教育研究センターの山本正嘉教授(51)は「長時間歩いても飽きない、森林浴効果で気持ちいいなど、楽しみながら運動できるのが登山のいいところ。ただ、体への負担が大きい運動であることに注意しないと、思わぬ事故につながる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 警察庁によると、昨夏の遭難者の約8割が40歳以上。「転落・滑落・転倒」による事故が多く、下り道でつまずいたり、バランスを失ったりして起きている。

 下りでトラブルが多いのは、体力が消耗していることに加え、脚の筋肉が引き伸ばされながら収縮するため筋肉が損傷しやすく、筋力が低下することがある。下りのときに脚がガクガクした経験がある人は多いが、まさに脚の筋細胞が壊れることによって起こる症状で、転ぶ一歩手前の状態。山本教授は「下りで転びやすいのは脚力が弱いことの表れ。登山をする中高年は体力に自信があり、日頃トレーニングしている人も多いが、若いころに比べて脚力が弱っていることの自覚も必要」と指摘する。

 ≪トレーニングと自覚≫

 つまずきや転倒などのトラブルを起こさないため、日頃のトレーニングが欠かせない。登山家の田部井淳子さん(69)は、朝起きてから夜寝るまで、日常生活の動作をトレーニングと考え、意識的に体を動かしている。「テレビを見ながらスクワットをする、電車を待ちながらつま先立ちをする、トイレで座っているときに脚を前に出すなど、普段の生活をちょっと見直すだけでトレーニングになる」と田部井さん。

 疲労をためないために登山中の栄養補給も大事だ。中でも糖分(炭水化物)の不足はバランス能力や敏捷(びんしょう)性、思考力などの低下につながるため、疲れがひどくなる前に栄養補給した方がいい。また、アミノ酸は筋肉痛や疲労感をやわらげる効果があるとされている。

 1年の120日は海外、150日は国内の山に登っている田部井さんは、ストックの使用やサポートタイツの着用、アミノ酸摂取など、登山に役立つといわれる道具を利用し、体の負担を軽減。「登山を楽しく続けるためには、まず自分をよく知ること。自分の健康状態や体力レベルを考えた上で、自分に合う山を選び、事前準備をして挑戦してほしい」と、田部井さんは話している。

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 ■遭難の8割が40歳以上

 警察庁のまとめによると、昨年7、8月の2カ月間に全国の山岳で起きた遭難事故・遭難者は453件・525人で、いずれも過去最高となった。40歳以上の中高年が約8割に上り、死者・行方不明者では79人中76人が中高年だった。事故のおよそ半数を占めるのが「転落・滑落・転倒」で、多くは下り道での事故という。わずかな不注意や安易な行動が原因で事故が発生していることから、同庁は登山者に対して、余裕を持って計画をたてるとともに、体調不良時には早めに行動を中止するよう呼びかけている。

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