自転車前輪外れ重傷、輸入会社が国へ報告怠る

茨城県つくば市で2008年、走行中の輸入自転車の車輪が外れ、乗っていた男性が重傷を負う事故があったが、輸入会社が国への報告を怠っていたことがわかった。

消費者庁はきょうにも事故の概要を公表する方針で、事故原因の調査も始めた。

 重傷を負ったのは、つくば市の元会社経営・中島寛さん(60)。2002年に海外メーカーの自転車を購入したが、08年8月、通勤で道路を走行中に前輪が脱落し、転倒して脊髄(せきずい)を損傷。現在も手足がまひして立ち上がれない状態で、病院でリハビリを続けている。

 この自転車は地面からの衝撃を金属製バネで和らげる「サスペンション機能」が付いたタイプ。中島さん側の弁護士によると、前輪を支える棒状の部品の内部のバネがさびて折れたのが直接の原因だったといい、中島さん側は部品に問題があったとして、輸入会社に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす意向だ。

 消費生活用製品安全法は、生活にかかわる製品で30日以上のけがを負うなどの重大事故について、製造・輸入業者に対し、事故を知った日から10日以内に消費者庁へ報告するよう義務づけている。昨年9月の同庁発足前も経済産業省への報告が必要だった。

 ところが、自転車を輸入した「サイクルヨーロッパジャパン」(東京都千代田区)は、役員らが事故直後に中島さんを見舞ったにもかかわらず、同庁からの指摘を受けて今月12日に報告するまで、約1年半にわたり怠っていた。同社は、同じ製品を約490台輸入。木村恵代表取締役は、事故原因について「今後、詳しく調査する」とする一方で、国への報告に関しては「報告義務を明確には認識しておらず、申し訳なかった」とした。

 重大事故に関する報告は、年間約1400~1500件に上り、国による原因究明や再発防止に重要な役割を果たしている。経済産業省によると、07年8月にも神戸市で別の海外メーカーの自転車の前輪を支える部品が破損して男性が転倒、骨折する事故があり、輸入業者から報告をうけた同省は調査のうえ、「雨水などでバネの腐食が進み、破断したと考えられる」と判断した。

 消費者庁は「報告義務は一部の業者にまだ浸透していない。ユーザーの使い方に問題があったと判断し、報告をためらう土壌があるのではないか」としている。

(2010年3月16日15時39分 読売新聞)

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