検察 懲役6年求刑 鳥取・強盗致傷事件

◆県内2例目 裁判員、質問なし

 鳥取市内のスーパーで弁当を盗み、逃げる際に店の保安員にけがをさせたとして強盗致傷の罪に問われた同市古海、鉄骨業井上礼記被告(35)の裁判員裁判が15日、鳥取地裁(小倉哲浩裁判長)であった。裁判員裁判は県内2例目。検察側は懲役6年を求刑した。(倉富竜太、中村瞬)

 起訴状によると、井上被告は8月9日午前11時半ごろ、鳥取市湖山町北6丁目のエスマート湖山店で弁当2個を盗んだのを保安員の男性に見つかり、軽乗用車で逃走。運転席の窓枠にしがみついた保安員を路上に転倒させて、軽傷を負わせたとする強盗致傷罪に問われた。

 裁判では、裁判員候補の73人に呼び出し状を送り、事前に辞退が認められた人などを除く42人が鳥取地裁に足を運んだ。その中から女性1人と男性5人の裁判員と男性2人の補充裁判員が選ばれた。

 井上被告はグレーのスーツ、青色のネクタイ姿で出廷。「間違いありません」と起訴事実を認めた。

 検察側は冒頭陳述で、井上被告が保安員の両手を車の窓ガラスに挟んだまま約600
メートル走行した様子を身ぶり手ぶりを交えながら再現し、危険性を指摘。弁護側は、けがを負わせたのは偶発的で計画性はなかったと主張した。

 被告人質問では「車にしがみつくという状況を危険だと思わなかったのか」という弁護側の問いに対し、井上被告は「けがをしたら大変だと思い、時速20~30キロメートルで走った」と説明した。検察側が「車を停車させようとは思わなかったのか」と尋ねると、井上被告は「その時は思わなかった」と答えた。裁判員の質問はなかった。

 その後の論告で検察側は「万引きをし、捕まりたくないために逃げようとした動機は身勝手で同情の余地はない」と指摘。「危険を回避する意図はなく、被害者に与えた恐怖感は想像に絶する」と懲役6年を求刑した。一方、弁護側は最終弁論で「振り落として対向車にひかれる危険を回避するため、途中で交通量の少ない脇道に入っている」などとして執行猶予付きの判決を求めた。

 裁判はこの日で結審し、16日午後3時から判決が言い渡される。

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