地裁で審理の傷害致死事件
~被告に猶予判決
京都地裁の裁判員裁判は10日、傷害致死罪に問われた大工福吉恒志被告(31)=西京区=に対し、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。宮崎英一裁判長は「尊い人命が失われた結果は重大だが、偶発的犯行で遺族の処罰感情も厳しいものではない。社会で更生する機会を与えることが相当だ」と述べた。
裁判員と裁判官による評議が長引き、判決言い渡しは予定より約1時間20分遅れた。 判決によると、福吉被告は02年9月30日、西京区の路上で、沢辺富さん(当時55)の顔面を1回殴り、転倒させて脳挫傷などを負わせ、同年10月3日、死亡させた。
宮崎裁判長は、福吉被告が約7年間事件の真相を隠していたことなど、量刑を決める際に考慮した事情を説明。事件隠しについて「勤務先が口止めを指示したことを考えると、大きく考慮することはできない」と説明し、福吉被告が反省していることなどを併せて刑を酌量したと述べた。
宮崎裁判長は最後に「身内を失った遺族があなたのことを考え、沢辺さんがのこした大工道具をあなたに、と言っている。自分がその道具にふさわしいか常に考えて使って欲しい」と説諭した。
判決後、裁判員と補充裁判員計8人全員が記者会見に出席。50代の会社員、嶋谷強さんは「議論が伯仲した結果、評議の時間が自然と延びた」と説明。説諭の内容は裁判員の意見として要望したもので「被害者の道具を見ることで、事件のことを思い出してほしいという思いを込めた」などと話した。