JR西日本の特急電車内で転倒、負傷した男性とJR西の和解条件が社員教育に参画することだったにもかかわらず、この男性の講演が1度しか行われていなかったことが25日、分かった。男性は「JR西の姿勢からは安全な会社に生まれ変わろうとする意識を感じることはできない」と憤っている。
男性は滋賀県栗東市の自営業、辻田靖夫さん(71)。平成15年5月に特急「サンダーバード」に乗車中、車両が揺れ転倒。左足を強打し、全治5週間のけがを負った。降りた京都駅では適切な処置を受けることができなかったという。
JR西は「運転に問題はなかった」としながらも、駅員の対応が不適切だったことは認め、17年5月に辻田さんに見舞金として現金10万円を支払った。その際、社員研修での講演など社員教育に参画することが条件として付け加えられた。
和解に基づき、辻田さんは18年2月、JR西の駅長ら約50人に対し「クレームへのプロの対応」と題して講演。しかしそれ以降、講演依頼が来ることはなくなったという。
辻田さんは「反省した上で和解に応じたはず。福知山線脱線事故もあり、少しでもJR西の企業風土改善に協力したかったのに」と話す。
JR西は「(和解時に)継続的に講演をするように依頼はしていない」とコメントした。