千葉県市川市で07年3月、英国籍の英会話講師リンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=の遺体が見つかった事件で、大阪府警は10日午後6時50分ごろ、死体遺棄容疑で指名手配中の市橋達也容疑者(30)とみられる男の身柄を大阪市内で確保した。フェリーで沖縄へ渡ろうとしていたところだった。その後、容疑者本人と確認し、同容疑で逮捕。身柄は東京へと移送された。整形手術によって顔の特徴を変え逃走を続けてきた市橋容疑者。遺体発見から960日、全容解明に向けて事件は大きく動きだした。
10日午後11時47分、市橋容疑者を乗せた東京行き最終の新幹線のぞみが、150人以上の報道陣でごった返すJR東京駅18番線ホームに到着した。乗客と同乗した報道陣約70人が先に降り、最後の乗客となった市橋容疑者は、乗っていた11号車から先頭車両の16号車まで車内を歩いて移動。同59分ごろ、ついにホームへ降り立った。
頭から黒い上着をすっぽりかぶり、数十人の警察官が360度をガチガチにガード。警察官から報道陣に対して「危ない!」「どけ!」などと怒号が飛ぶ。記者やカメラマン数人が転倒する中、市橋容疑者は階段を下り、日本橋口から警察車両に乗り込み、捜査本部の置かれる千葉県警行徳署へと向かった。
大阪府警によると、午後6時44分に「市橋容疑者らしい人物がフェリーターミナルにいる」と110番通報があった。大阪市住之江区の大阪南港フェリーターミナルに警察官が急行。沖縄行きのフェリー乗り場のベンチに座っていた男は、市橋容疑者の手配写真と酷似。職務質問に素直に応じ「市橋か」との問いに「市橋です」と認めた。
その後、住之江署で指紋を調べるなどし、市橋容疑者本人と確認、午後8時17分に死体遺棄容疑で逮捕した。「弁解することは何もありません。何も話したくありません」と話しているという。JR新大阪駅から乗り込んだ新幹線では約2畳ほどの多目的室に入れられ、報道陣はシャットアウトされた。
フェリー会社によると市橋容疑者は10日午後、神戸市内の営業所で神戸発の沖縄行きフェリーを申し込んだが、出航日ではなかったため、大阪南港発の夜行便に乗ろうとしていたという。
市橋容疑者は07年3月26日夜、自宅に訪れた捜査員の職務質問を振り切って逃走。捜査本部には東京・新宿や池袋の繁華街での目撃情報など約7400件の情報が寄せられたが、出てくる情報は不確かなものばかり。
だが、今月に入り市橋容疑者が整形していたことが発覚。テレビ、新聞で大々的に報じられ、整形後の顔写真も公開された。最近の足取りも詳しく判明し、逃げ場はだんだんと狭まっていった。
昨年8月から今年10月まで、「井上康介」と名乗って大阪府茨木市の建設会社の寮に住み込みで潜伏。同13日に福岡市の病院で整形手術を試み、24日に名古屋市の病院で鼻を高くする手術をした。その後、飛行機で再び福岡市を訪れていた。
寮からはパスポート申請の書類も発見され、海外逃亡を画策していた可能性も。だが、顔を変え、名前を変えての必死の逃亡も、捜査の、そして世間の網を逃れることはできなかった。