ライバル 最高の刺激剤

派手なガッツポーズが、復調を示していた。23日、今季開幕戦の全日本距離別選手権。500メートルで2年ぶりに自身の持つ大会記録を更新して優勝した。34秒台を2本そろえ、同じチームの長島圭一郎に完勝した。「今の段階の90%の力は出せた。初戦としてはかなりいいレース」

 「今年は注目されている感じがない。長島さんが一番の候補と言われて、みんなそっちに流れているので楽です」。開幕前。ひょうひょうと話しつつ、2学年上の好敵手の飛躍に刺激されていた。昨季、加藤はW杯前半戦で2勝したが、転倒を機に後半戦は不振に。体幹のバランスが悪くなり、股関節も硬くなっていた。

 対照的に長島は世界スプリント選手権総合2位、W杯年間総合でも2位となり、一気に金メダル候補と注目を浴びた。

 この夏、加藤が体を大きくするための筋トレに励んだのも長島の存在がある。昨季の練習中、着替えている時に衝撃を受けた。「あの細かった長島さんの太ももが、いつの間にか太くなっている」

 開幕直前の9月。日本電産サンキョーチームは合同練習を一時やめ、各自が単独で合宿を張った。加藤は故郷の山形で、苦手の持久系の練習に意欲的に取り組んだ。自分からコーチに申し出た。「インターバル走の間隔を詰めてください」。今村俊明監督は言う。「一人ずつが自分の課題と向き合い、目に見えないほかの選手を意識しながら練習を積めた」

 もちろん、今回体調不良で出遅れた長島も黙っているつもりはない。「仕上がりは20%。負けたということで気合を入れ直して頑張ります」

 加藤と長島。お互いの存在を刺激剤にして高め合った先に、バンクーバーの表彰台がある。

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加藤条治(かとう・じょうじ) 85年2月、山形市生まれ。山形中央高で高校総体500メートル3連覇を達成。34秒30の日本記録(05年11月当時世界新)を持つ。06年トリノ五輪は6位、W杯500メートルで通算6勝。日本電産サンキョー所属。

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