酒酔い搬送患者どう対応 問題解決へ四日市で研究会

アルコール依存症のチェックシート提案も
 救急現場のスタッフが酒に酔った搬送患者への対応に苦慮している現状から、四日市市内の病院関係者らが「『救急医療現場とアルコール問題』――連携して、医療崩壊に歯止めを!」と題した研究会を開き、解決策を検討した。緊急性がないのに繰り返し救急車を呼んだり、スタッフに暴言を吐いたりする患者に、酔いがさめてから自分の飲酒行動を省みてもらおうと、アルコール依存症のチェックシートを手渡すアイデアが提案された。(上村香代)

 研究会では、市立四日市病院救命救急センターの柴山美紀根副部長が、けがで搬送される患者の12・6%は飲酒した状態であるとの研究事例を紹介。同センターにも酒酔い状態の患者がほぼ毎日搬送され、会話が成立しなかったり、診察に非協力的だったりし、緊急を要するかどうかの判断が難しいという。診療を断ることもできず、対応に時間がかかるため、スタッフは心身ともに大きな負担を抱えている。

 四日市市消防本部では昨年、「気分が悪い」「転倒した」などの飲酒関係の救急要請が301件あった。そのうち急性アルコール中毒と診断された人は184人、アルコール依存症は15人だった。

 依存症の治療に長年携わってきた同市の「かすみがうらクリニック」の猪野亜朗医師は「飲酒後の事故や暴力、自傷行為などによる外傷で搬送される患者は、依存症の可能性が高い」と説明。救急外来で依存症を見抜くことができれば、患者自身も自覚し、専門的な治療を受けるきっかけになると指摘した。そのうえで「依存症患者は繰り返し救急車を利用する傾向にある。専門治療を受けることで、救急車を呼ぶ回数も減り、現場の負担も減る」として救急医と専門医の連携が必要と強調した。

 一方、提案されたチェックシートは「明らかに有害な結果が起きているのに飲酒する」「飲酒したいという強い要望、強迫感がある」などの質問に答えてもらうことで、依存症かどうかを判定するもの。裏面には専門医のいる医療機関や断酒会など自助グループの連絡先を記載し、研究会では「患者や家族に手渡すだけでも効果があるのでは」との意見が出た。シートは、市立四日市病院や県立総合医療センターなど救急外来がある同市内の医療機関で近く活用される予定だ。

(2009年10月28日 読売新聞)

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