7月26日7時3分配信 スポニチアネックス
男子ゴルフツアーのスポニチ後援「長嶋茂雄招待セガサミー・カップ」第3日は25日、北海道千歳市のザ・ノースカントリーGC(7115ヤード、パー72)で行われ、1打差の2位で出た井戸木鴻樹(47=小野東洋GC)が、4バーディー、ノーボギーの68をマークし、通算13アンダーで単独首位に立った。逃げ切れば1993年NST新潟オープン以来の通算3勝目で、15年11カ月24日の優勝ブランクは、ツアー制度施行後の最長記録となる。石川遼(17=パナソニック)は7バーディー、3ボギーの68で回り、通算6アンダーの22位に浮上した。
リーダーボードの最上位に名前を掲げたのは、47歳の井戸木だった。単独首位は前回優勝した93年のNST新潟オープン以来。しかも2位に3打差をつけ「想像できませんわ」と、しわが深く刻まれた顔で笑った。
自分のゴルフを貫いた。「ツアー一飛ばないプロ」と公言する通り、ドライバーの平均飛距離246・5ヤードは予選通過選手中最下位の61位。ロングホールでは第1打をドライバー、第2打をフェアウエーウッドで打っても100ヤード以上の距離が残る。だが得意のショートアイアンでピンに絡め、4ホール中3ホールでバーディーを奪った。「みんな2オンするけど、これが僕のゴルフですわ」。飛ばないが曲がらないショットでこの日ラフに入れたのは2度だけ。フェアウエーを歩き続け、05年から悩み続けているパターのイップスをもはねのけてチャンスをものにした。
1990年から2006年までの間で賞金シードを外れたのはわずか3年。息長く活躍し続けたが、07年に暗転した。9月に肋軟骨を損傷し3試合の欠場を余儀なくされた。幸い、特別保障制度が適用され翌08年の開幕から3試合で約53万円を稼げば賞金シードを取れるはずだった。しかし2月にテレビ収録で訪れたマレーシアで「おいしいビールを飲もうと思って」ランニングした時に転倒し左足甲を4カ所も骨折。開幕には間に合わせたが、すべて予選落ちでシードを逃した。
趣味は「子供のために」と始めたオオクワガタのブリーダー。家族から「アリが家に上がって来るからやめて」と言われて07年に泣く泣くやめたが、皮肉にも以後、シード落ちの憂き目にあった。大好きな銭湯で「お風呂に入ってる場合ちゃうで」とファンから叱咤(しった)激励を受けたこともあり、一時は「辞めたい気持ちもあった」という。
今季は予選会を通過し出場権を得た。16年ぶりの優勝を果たせば、93年に長谷川勝治が記録した13年ぶりの最長ブランク優勝記録を更新する。「予選通っただけでも上出来ですわ。あしたもボギーのないゴルフをしたい」。いぶし銀が花道を刻みながら5837日ぶりのツアー通算3勝目に突き進む。
◆井戸木 鴻樹(いどき・こうき)1961年(昭36)11月2日生まれ、大阪府出身の47歳。82年にプロ転向し、90~95、97、98、00~04、06年と賞金シードを獲得。90年関西プロ、93年NST新潟オープンで優勝。フェアウエーキープ率1位に02年から2年連続、05年からは3年連続の計5度輝くなど正確なショットが武器。1メートル67、62キロ。