「事故を客観視できなかった社会」

 「事故当時、エレベータを製造したシンドラー社を知っている日本人はほとんどいなかった。その結果、事故による危険なイメージを、シンドラーのすべてであるかのように日本の社会は受け止めた」
 先月2日、「危機管理コンプライアンスと技術革新」をテーマとした国際シンポジウムが香港で開かれた。2006年6月に発生した東京都港区の公営住宅でのエレベーター事故に関する当時の状況を、弁護士で桐蔭横浜大学法科大学院教授の郷原信郎氏はそう述べた。郷原氏は事故の後、シンドラーエレベータの独立アドバイザリー委員会で委員長を務めた経験を持つ。
[国際企業が直面した危機]
 経済のグローバル化により、企業のコンプライアンス(法令順守)やCSR(企業の社会的責任)といった言葉が日本の社会にも浸透した。
 その影響もあるのか、ここ数年、食品偽装や事故隠しなど、企業の不祥事が発覚するたび、その企業はマスコミから激しい非難(バッシング)を受け、経営危機に陥るケースも増えている。
 その結果、企業の内部で問題があった場合、経営者は速やかに事実を発表し、報道陣の前で陳謝し、カメラに向かって頭を下げる―。そんな対応が、日本の企業の危機管理(クライシスマネジメント)の基本になりつつあるようだ。
 スイスに本社を置くシンドラーグループは、エレベーターで世界第2位のシェアを持つグローバル企業だ。事故からは、国際的企業が日本で直面した危機管理の問題も浮かび上がり、さらに問題にかかわる日本社会の課題も透けて見えてくる。
[燃え広がった非難]
 事故直後、シンドラー社は「捜査への影響」を理由に関係者への説明を拒否する一方、メンテナンスの問題などを指摘するコメントを発表した。記者会見を開いたのは事故から9日も経った6月12日だった。そういった対応は、被害者の遺族や住民に対して極めて誠意を欠くものと日本の社会では受け止められた。
 さらに同じ時期、シンドラー社製のエレベーターのほかの事故やトラブルが次々と発覚した。
 そんな経緯を経て、事故原因とは別に、マスコミによるシンドラー社への激しい非難が燃え広がった。
 その時から現在に至るまでシンドラーエレベータの日本での販売実績はゼロのままだ。
[分からなかった社会の期待]
 香港でのシンポジウムにはシンドラーグループのアルフレッド・N・シンドラー会長も参加した。シンドラー氏は、事故の被害者と遺族に哀悼の意を示すとともに「われわれの事故への対応の仕方は国際的な企業としては典型的なものだった」と述べた。
 その一方で「初期の対応において、日本の社会の期待から大きく外れた」と認め、「もう少し早く分かっていれば適切な対応ができたかもしれない」と悔いた。
 郷原氏は、「日本社会の構造的な問題として、事故を客観化するシステムが欠如している」と述べた。そして、シンドラー社を非難するマスコミの論調や国民感情が捜査機関の判断にも影響を与え、捜査の長期化につながっていると指摘した。

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そうなんですよね、建物に係る施設というのはメンテナンスが大事なんですよね。

メンテナンスをおこたって事故がおきると管理者の管理不足になるんです。

管理者の皆様、気をつけてください。

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