三菱商事、廃プラ再資源化に本格参入 物流用パレット、年120万枚視野

2月28日8時33分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

 三菱商事は、容器包装リサイクル法に基づき、自治体が分別回収したプラスチックごみを粒状のペレット(再生樹脂)などに再資源化する環境関連事業に本格参入する。同社が61%出資する廃プラスチック再資源化事業会社、エム・エム・プラスチック(MMP、資本金21億円、千葉県富津市)が4月から本格稼働する予定で、年間にしてプラスチックごみ1万8360トン分から13万枚の物流用パレットを製造できる設備を整えた。3年後の2011年度には黒字転換を図り、需要動向に応じて最大で年間120万枚を製造できる設備の増強も視野に入れる。

 総合商社が経営の主導権を握る形でごみの回収から再資源化商品の開発・製造までの事業展開を図る事例は初めてとみられる。MMPは三菱商事が最大株主として61%を出資するほか、ゴム・プラスチック製造業の明治ゴム化成(東京都新宿区)、廃棄物処理業の市川環境エンジニアリング(千葉県市川市)、太平洋セメントの物流子会社「東(あずま)海運」(東京都中央区)も株主として加わる共同出資会社。

 同社が製造する物流用パレットは、国内初の「サンドイッチ製法」を採用。パレットのコア(芯)部分に回収ごみを再生した樹脂を使い、パレットのスキン(表面)部分はバージン(未使用)のプラスチック樹脂を使用する方法で、現在、製法特許を申請中だ。素材の“品質・強度”で、従来の「リサイクル製品の弱点を改善した」と森村努MMP副社長は自信をみせる。

 重さ1トンの荷物にも耐えられる物流用パレットを「環境にやさしい製品」として、自動車関連や飲料、製紙、製粉各メーカーに売り込むほか、マンホールのふたや駐車場の滑り止めなど新たな用途開拓も進める。売上高目標は初年度(09年度)11億円で、2年目(10年度)は20億円と倍増する計画。3年目(11年度)には事業の黒字化を達成する方針だ。

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【予報図】

 ■世界に挑む3R“生みの親”

 「不況下でも環境ビジネスはしっかりやっておく必要がある」。三菱商事の小島順彦(よりひこ)社長は社内にそう檄(げき)を飛ばす。昨秋以降の世界同時不況で同社を取り巻く事業環境も逆風下にあるが、世界経済の今後を踏まえれば「環境」分野の事業育成は同社の成長に欠かせないとの判断があるためだ。

 MMPが4月からプラスチックごみの再循環・製造事業に参入するのも、三菱商事のこの事業方針に沿っている。例えば、ごみの分別工程で水を一切使用しない「乾式洗浄機」を導入することで、製造する物流パレットは従来のバージン素材パレットに比べ、1枚当たり27キログラムの二酸化炭素(CO2)の削減効果が期待できると試算する。

 また地球温暖化対策だけでなく、不足するごみの最終処分場問題や資源の有効活用にも寄与できるわけで、同事業を通じた「プラスチックの再利用は今後の資源確保としても欠かせない」(小松孝一常務・イノベーション事業グループCEO)。

 三菱商事は環境リサイクル事業に自信も持つ。35年前から電炉の製造工程で生じる灰に含まれる亜鉛を再利用し、車などのタイヤの補強剤に使用する事業を手掛けている。その事業会社名は「サンアール」。「社名がそのまま『3R=リデュース(ごみの排出削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)』の語源として一般に普及した」と水谷重夫環境・水事業ユニットマネジャーは説明する。

 また4月からは、環境・水事業ユニットを全社横断的な組織とし、社長直轄の「環境・水事業開発本部」に昇格させる。

 一般論でいえば、環境関連ビジネスは大規模な収益をもたらす現状にはなく、事業採算面で黒字化するには法整備など国の後押しも重要な要素となる。

 そんな中、三菱商事はMMP以外にも、木質ペレットの製造事業など将来への“種まき”を日本国内から進めている。

 環境関連事業に本格参入する三菱商事の今回の“挑戦”の成否が、世界を視野に入れた同社の環境ビジネスの行方を占う最初の試金石となりそうだ。(西川博明)

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