12月1日8時3分配信 産経新聞
冬本番を迎え、暖房器具はフル回転だ。平成13年ころから普及したハロゲンヒーターは製造不良などで事故が起き、117万台余りが無料回収や無償点検修理(リコール)の対象となっている。だが、リコールに気付かないまま使い続けて事故に遭う例があるとして、国民生活センターが注意を呼びかけている。(日野稚子)
≪電気暖房機器の3割≫
国民生活センターなどに寄せられたハロゲンヒーターの事故は、平成10年度から今年9月までで計417件に上り、電気暖房機器での事故情報の3割を占めている。事故の内容は「煙や火花が出た」「発火した」がそれぞれ2割を超え、ヒーター管などの破裂を加えると6割にのぼった。
製品事故の報告を受けて回収や無償点検修理などの対象となったのは、センターが把握しただけで19団体44機種の計117万3768台。12~15年ころに中国、韓国、台湾から輸入・販売されたものが、1~3年後にリコール対象になる場合が多い。輸入元だけで対応する場合や、販売元業者も加わってリコール対応の窓口を設置するなど、実施方法はさまざまだ。
≪ガラス管にひび≫
ハロゲンヒーターのオレンジ色に光るガラスのヒーター管には、フィラメントとハロゲンガスなどが封入されている。特定時期の製品にリコールが相次いだことについて、あるメーカーの担当者は「ガラス管の質が悪くて亀裂が入り、封入ガスが抜けて空気が混ざり、発火したり破裂したりした」と話す。
扇風機型で、ヒーター管を保護するクッションやスプリングがなく、運搬の衝撃でガラス管にひびが入りやすい製品も見受けられたという。
温度調節は強弱2段階が主流だが、強から弱へ切り替える際は、電流を半導体のダイオードに通して調整する。こうした温度調節の電子部品は、ハロゲンヒーター本体底部にあるため、故障したまま弱運転にして発火し、床に敷いたカーペットなどが焦げる事故も多かった。
≪進まぬ回収≫
ところが、製品の回収は進んでいない。18年12月には千葉県の60代女性から「3年前に購入したハロゲンヒーターから発火して消し止めたが、業者に連絡したら、リコール社告を3年前に出したという。社告に気付かなかった」とセンターに連絡があった。
センターがリコールを出した19団体に回収状況などをたずねたところ、「2~3割」という回答が圧倒的に多く、最高でも4割程度にとどまっていた。
ヒーター管が破裂し、カーペットが焦げる事例が起きたとして昨年1月に自主回収を決めた輸入業者は、販売元の家電量販店と組んで対応窓口を開き、社告を出した。14年秋から1年余りで約10万5000台を販売したが、昨年秋に2度目の社告を出しても、回収率は2割程度だったという。「季節商品なので、使い始めるころに気付かれる場合が多くなる」と、先月には3度目の社告を実施した。
センターは「ハロゲンヒーターを使うなら、リコール対象品になっていないかどうか確認してほしい」と呼びかける。輸入元や販売元に直接問い合わせるほか、国民生活センターや製品評価技術基盤機構のホームページで社告やリコールを調べることもできる。
≪3~5年で寿命≫
ハロゲンヒーターには耐用年数がある。高熱になるガラス管は、メーカーによっても異なるが3000~5000時間が目安。冬場(6カ月)を通して1日6時間使えば、3~5年で寿命となる。経年劣化による重大事故を避けるため、使用停止を呼びかけたメーカーもあるが、担当者は「利用者の方に事故になってからでは遅いからと説明をしても、もったいないとして、理解していただけない」と打ち明ける。
耐用年数に達していなくても、安全に使うには(1)転倒安全装置に負荷がかかるので、じゅうたんなど柔らかい面には置かない(2)ヒーターのそばを離れるときは電源を切る(3)外出時はコンセントを抜く…を心がけたい。