11月19日15時2分配信 毎日新聞
◇もう誰も、被害者にも加害者にもなってほしくない
事故の犠牲者は、もういらない――。「世界道路交通犠牲者の日」の16日、交通事故の遺族らでつくる「TAV」(交通死被害者の会)の県内の会員らが彦根市竹ケ鼻町のビバシティ彦根で、ビラを配り、「事故死ゼロ」の実現を呼びかけた。【近藤希実】
活動を提案したのは1年前に三男篤史さん(当時17歳)を事故で亡くした野瀬欣広(よしひろ)さん(54)=甲良町。篤史さんは昨年11月8日午後4時15分ごろ、ミニバイクでアルバイト先に向かう途中、彦根市川瀬馬場町の県道交差点で転倒。対向車線の軽自動車にはねられた。しかし、現場にはスリップ痕もなく、なぜ倒れたかは不明なままだ。
欣広さんは「原因不明では浮かばれない」と事故の目撃者を探す傍ら、TAVへ入会。事故撲滅のために活動する中で、事故が後を絶たない現状に「もう誰も、被害者にも加害者にもなってほしくない」と強く思うようになった。
犠牲者の日は、11月の第3日曜を世界的な事故抑止と慰霊の日にしようと、05年に国連で採択された。日本でもTAVが全国の事故現場で一斉に黄色い風車を供え、事故の悲惨さを訴えている。今年は大阪、名古屋でビラ配りが行われ、欣広さんは「滋賀でも交通モラルを意識してほしい」と地元での街頭活動を決めたという。
16日は家族連れらに約500枚のビラを配り、「年間6000人が事故で亡くなっている。一つの町が消えるほど大きな数字だと意識して。車は便利な道具だけど、大切な人を奪う鉄の塊でもある」などと訴えた。
篤史さんの事故の情報は思うように集まっていない。それでも、欣広さんは「交通安全のうねりを作り、事故ゼロを目指したい。篤史が背中を押してくれる」と話している。目撃情報は欣広さん(090・7556・4835)。