本田さん 病床「ラスト・コンサート」CD化

11月12日7時6分配信 スポーツニッポン

 2005年11月に急性骨髄性白血病のため亡くなった歌手本田美奈子.さん(享年38)が、他界2カ月前まで病床で録音していた歌声をまとめたアルバム「ラスト・コンサート」が12月10日に発売される。偶然同じ病院に入院した恩師の作詞家岩谷時子さん(92)を励ますためにボイスレコーダーに録音したもの。死と直面しながら吹き込んだ文字通りの“命の歌”だ。

 本田さんが都内の病院に入院したのは05年1月。その5カ月後に岩谷さんが道路で転倒して大腿骨などを骨折し、同じ病院の1つ上階に入院した。

 92年「ミス・サイゴン」でミュージカルに挑戦した時、その才能を高く評価したのが訳詞をしていた岩谷さん。その後は本田さんのために多くの詞を提供。互いに「お母さん」「美奈ちゃん」と呼ぶ関係だった。

 本田さんは準無菌室から出られず、岩谷さんは動くことができない状況。そこで本田さんはボイスレコーダーにメッセージと歌声をアカペラで吹き込み、所属事務所の高杉敬二社長らが病室へ届けた。全部で31曲。その中から、岩谷さんが本田さんのために書き下ろした「AMAZING GRACE」「JUPITER」をはじめ、「お嫁においで」など岩谷作品のカバーなどを歌った19曲をCD化した。

 病床でのレコーディングは凄(せい)絶だった。高杉社長によると「抗がん剤の副作用でのどの奧まで口内炎があるため、歌いながら血を吐いた時もあるし、39度の高熱の時もあった。それでも毎日録音して一番元気よく歌えたものを届けた。先生を励ますため、自分のことは顧みずに懸命に歌っていた。美奈子はそういう子でした」と振り返った。

 当然、音質はベストではないし、音程がずれるところもある。だが、文字通り「命」を込めた歌声はとてもやさしく澄んでいる。岩谷さんは届いた歌への感想をボイスレコーダーに吹き込んで返事を送っており、その中には「美奈ちゃん、あなたが私の娘だったらどんなに幸せか」という言葉もあったという。

 クリスマス前の発売について、高杉氏は「親から子への、お子さんから親御さんへのプレゼントにしてもらえれば」と話している。

 ≪リミックスアルバムも発売≫このアルバムに先駆け、本田さんの3回目の命日となった今月6日にリミックスアルバム「Eternal Harmony」が発売された。英ロックバンド「QUEEN」のギタリスト、ブライアン・メイ(61)が演奏とバックコーラスで参加した「AMAZING GRACE」が話題。また、15日には親交のあった歌手やファンが集まる「リブ・フォー・ライフ音楽彩~本田美奈子.メモリアル」が東京・新橋のヤクルトホールで開催される。

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