耐震偽装の悲劇によって生み出された住宅瑕疵(かし)担保履行法が、2009年10月1日に本格施行を迎える。まだ1年半も先の話と思いがちだが、ここにきて国は周知徹底の動きを強めている。法が社会に及ぼす影響の大きさを考慮してのことだ。特に規制対象となる建設会社や不動産会社はいまから周到な準備を進めておかないと、思わぬ痛手を被ることになりかねない。
この法律は、耐震偽装マンションの分譲業者などが倒産して瑕疵担保責任が果たされず、購入者が大きな被害を受けたことを教訓として07年5月に成立した。
新築住宅を供給する際、建設会社や不動産会社に保証金の供託、または瑕疵担保責任保険への加入のいずれかを義務付けることが柱。違反すれば罰金が科せられるほか、新築住宅の請負契約や売買契約が結べなくなる。まさに死活問題だ。
最も気をつけなければならないのは、09年10月1日以降に引き渡す新築住宅から適用するという法施行のタイミングだろう。
保険を活用するケースでは、建築中の現場検査などが必要なため、遅くとも基礎配筋工事の前に加入を申し込んでおく必要がある。
もし、何らかの事情で工期が延びたり、マンションが売れ残ったりして、住宅の引き渡しが来年10月以降にずれ込めば、原則として保険には加入できない。最低でも2000万円の保証金を10年3月末までに供託しなければならず、しかも、それが10年間も塩漬けになってしまうのだ。
保険料の負担も決して軽くない。住宅保証機構が6月2日から取り扱いを始める瑕疵担保責任保険では、125平方㍍~150平方㍍規模の一戸建ての場合、中小企業の保険料は約9万円。戸数が多い分譲住宅では、その金額が大きく跳ね上がる。過去に瑕疵を引き起こした企業には通常より高い料率が適用されることもあり得る。
住宅市場の冷え込みが懸念される中にあっては、保証金や保険料の負担が経営を圧迫する要因の一つとなることも当然予想されてくる。
国土交通省は、3月末に周知徹底を要請する通知を各地方整備局や建設業団体などに送った。政府広報やセミナーなども活用してきめ細やな情報提供に努めている。
しかし、こうした取り組みには限界もある。この先、法の浸透の度合いによっては、一定の要件の下で着工後の保険加入も受け入れる仕組みをつくるなど、施行の円滑化に向けた措置も必要となってくるのではないだろうか。
耐震偽装の犠牲者を二度と生み出さない責任と、建築に対する信頼を回復する役割―。大切な使命を担った新建築法制が建築関係者の足かせとなり、社会の不利益となる事態はなんとしても避けなければならない。
Copyright (C) 2006KENTSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved
中小の住宅販売メーカーにとっては大きな痛手となりそうですね。