【健康】「パーキンソン病」闘病記をまとめた富田武さん(77)

 ■友を得て病気と仲良く付き合う

 難病「パーキンソン病」を患い、約15年の闘病生活を送る大阪府高槻市の富田武さん(77)が闘病記『絆(きずな) パーキンソン病と仲良くなる法』をまとめた。突然の難病の宣告、仕事をあきらめて闘病生活へ。思うように体が動かず、足がすくみ転倒を繰り返す。不眠にも苦しんだ。支えとなったのは、家族や友人、患者仲間との出会い。闘病記を通じ、同じ病に苦しむ人々に「友を得て病気と仲良く付き合っていこう」とエールを送る。(岸本佳子)

  

病気知らずだったが

 富田さんが異変に気付いたのは15年ほど前。近所の医師が富田さんの妻に「ご主人の歩き方がおかしい」と指摘した。猫背で歩幅が狭く、不自然なスタイル。書類に書きこむ字が小さくなり、自分でも読めないような字になることもあった。不眠や頻尿にも悩み、専門医の診察を受けたところ、「パーキンソン病です」。それまで病気知らずだっただけにショックは大きく、「自分の体が奈落の底に落ちていくような恐怖感」を覚えたという。

 定年を延長して仕事に精力的に取り組んでいたが、引退を決めた。「寂しい気持ちでした」。徐々に足がすくむ症状が強くなり、自宅の階段から転落したり、室内で段差に足を取られて転倒したりすることもしばしば。手術を決意し、無事に成功。足のすくみが治まり、不眠も解消された。しかし、数年後に再発した。

 そんなとき、病と闘う富田さんを支えたのは家族や学生時代の友人、そして同じ病に苦しむ患者たちとの出会いだった。患者と家族でつくる組織「全国パーキンソン病友の会」の大阪府支部に参加。活動を通して、それまで抱いていた不安な気持ちが消えていったという。平成17年には地元、高槻に下部組織として「うの花会」を立ち上げた。
  

発病前より充実

 パーキンソン病の患者は、背中が曲がったり、姿勢が傾いたり、震える、といった身体に表れる症状を気にして、「人に会うことを避け、家に閉じこもりがちになる」という。富田さんは患者会の活動や闘病記を通して、「人は1人では生きていけないものです。引きこもっている人の背中を、後ろからそっと押してあげたい」と願う。

 現在、富田さんは歩行器を利用しているが、基本的に身の回りのことは1人でこなしている。うの花会など患者団体の活動を仲間と続けながら、趣味の読書や音楽を楽しむ毎日。「病気のことはあきらめ、楽しみを追求しています」と富田さん。「発病前よりも発病後のほうが充実している。パーキンソン病は私にとって“財宝”です」

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 闘病記『絆』は、6月に大阪市内で開かれる全国パーキンソン病友の会総会で販売予定。3冊組で、1、2巻各500円、3巻300円。売り上げは「うの花会」などの活動に充てられる。問い合わせは富田さん((電)080・6164・8612)。

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【用語解説】パーキンソン病

 国内では約1千人に1人が発症するといわれている。中脳の黒質の神経細胞が減少し、ドーパミンも減少するため運動障害が引き起こされるが、その仕組みは完全に解明されていない。症状には手が震えたり、筋肉が硬くなり動作がぎこちなくなったり、転びやすくなったりといった運動面のほか、便秘や不眠などもある。

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