「フィギュア世界選手権最終日」(27日、トリノ)
女子フリーを行い、バンクーバー五輪銀メダルの浅田真央(19)=中京大=がショートプログラム(SP)、フリーともに2位の合計197・58点で、2年ぶり2度目の優勝を果たした。日本選手で2度の優勝は史上初。SP7位の五輪女王、キム・ヨナ(19)=韓国=はジャンプで転倒するなどミスが目立ったが、高い演技点で2位に食い込んだ。SP11位の安藤美姫(トヨタ自動車)は4位で、鈴木明子(邦和スポーツランド)は11位だった。
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前回は立つこともできなかった表彰台の真ん中で、真央が君が代を口ずさんだ。隣には五輪女王のキム・ヨナ。「五輪よりいい演技ができた。やり切ったという気持ち。SP、フリーともほぼ完ぺきにできてうれしかったが、その後に金メダルがついてきて、またすごくうれしくなった」。波瀾(はらん)万丈だったシーズンを有終の美で飾った。
シーズン序盤に苦しんだラフマニノフの「鐘」を「最後は自分のものにできた」と胸を張る。一つは回転不足になったが、2度のトリプルアクセルを着氷。トップの技術点で得点を稼いだ。ヨナに完敗した五輪でミスが続いた後半のジャンプも「絶対に決めたいと思っていた」と今度は成功させた。
重厚な曲調に負けない、鬼気迫る表情で激しくリンクを縦断する終盤のステップは「一番の出来」と自賛した。
五輪後は気が抜けた。だが、大会前の日本での練習は時差があるトリノでの競技時間を意識し、日付をまたぐ深夜に行った。一時は約2キロも増えたという体重も、しっかり落としてきた。
うれし涙はない。心身の準備不足が明らかなヨナにフリーのトップは譲った。「五輪の悔しさは、この試合で晴らすことはできない」。周囲は雪辱戦と見るが、真央自身はスランプに陥った序盤戦や悔し涙を流した五輪の課題を克服したい一心だったのだろう。
日本スケート連盟の伊東秀仁フィギュア委員長は「つらい思いもした五輪から気持ちを立て直したことが成長の証し」とたたえた。どんな試合でも全力で臨み、苦い思い出もばねにできる。大きな収穫を手に、19歳は次のシーズンに挑む。