自立 /青森

2月の大雪の日、買い物袋を両手に提げたマスターは、立ち寄ったドラッグストアの床で激しく転倒し右腕を強打した。誰かが落とした靴の雪を踏んでしまった。店員が駆け寄り、手を貸そうとしたが、激痛の中でマスターは「かもね(構わない)でけろ」と断った。「今、自分で立ち上がらねば、店は終わりだな」となぜか思った。

 脱サラして青森市に居酒屋を構えて33年。一人暮らしで70歳のマスターは1人で店を切り盛りしてきた。店をのぞいて、客がいたことがない。でも店の存続を危ぶんだことはないという。

 転倒から3分。マスターは両手をゆっくりとついて立ち上がり、「まだ、いけるな」と思った。腕は今もちゃんとは上がらない。でも、80歳まで店を続ける自信がまたついた。(阿)

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