消費者庁が同庁発足後、厚生労働省から通知された医療事故17件を一切公表していないことがわかった。同庁は患者のプライバシー保護などを非公表の理由に挙げているが、国立や大学病院での医療事故は別の機関がすでに公表しており、同庁も公表に向けた検討を始めた。
各省庁は、製品やサービスが安全性を欠き、死亡や全治30日以上の重傷、火災などを伴う重大事故を起こした場合、消費者安全法に基づいて、消費者庁に通知している。経済産業省は製品事故、国土交通省は乗り合いバスでの転倒や都市公園での遊具事故、文部科学省は学校での遊具事故などの通知が義務づけられている。消費者庁は原則水曜日に過去1週間の受け付け分を公表している。
同庁によると、同庁が発足した9月から11月に通知を受けた重大事故は157件。このうち厚生労働省から寄せられた病院での医療事故は17件あった。手術中の事故や院内での転倒事故が中心だったが、事故の内容や被害の程度はもちろん、発生日や病院のある都道府県、公立病院か私立かに至るまでまったく明らかにしていなかった。消費者事故の現状について確認するため、同庁が10日に非公開で開いた省庁間会議でも、医療事故だけが重大事故の一覧表から外された。
同庁消費者安全課は「患者の個人情報保護の観点や、因果関係の判断が難しいため、原則非公表としてきた」と説明している。
しかし、大学病院や国立病院など270施設で起きた医療事故については、財団法人・日本医療機能評価機構(東京)への報告が義務づけられており、2008年に報告があった約1400件については、事故内容や被害の程度などが報告書などで公表されている。
福島瑞穂・消費者担当相は11日の閣議後会見で、医療事故の公表について「検討したい」と前向きな考えを示した。(茂木克信)