「災害時に何が起こるかを予想する『災害イマジネーション』が防災では最も重要です」。11月29日、東京都内で開かれた防災士を志望する人向けの研修講座で、目黒公郎・東京大生産技術研究所教授(都市震災軽減工学)は強調した。目黒教授は、阪神大震災で発生した家具の転倒による被害の写真や、寝ているところに大きなタンスが倒れてくる様子を再現した実験の映像などをスライドで見せながら、地震時には家具が「凶器」に変わる恐ろしさを説明した。
地震の際に家具が倒れる方向や場所を想定して配置を工夫することで、被害を軽減できる可能性がある。目黒教授によると、多くの壁が同じ方向を向いている建物は、壁と垂直の方向に揺れやすい。このため壁に沿って家具を置くと、転倒の危険性が高い。特に、長方形の部屋で長い方の二つの辺が壁の場合は、家具を壁沿いにただ並べると、何も倒れてこない空間ができにくいため、危険度は増すという。最近は細長い敷地に住宅を建てるケースが増えており、注意が必要だ。
目黒教授は「間口方向と奥行き方向の壁の量のバランスによって、揺れやすい方向が変わる。家がどの方向に揺れやすいのかを把握したうえで家具を置いた方がいい」と指摘する。
一方、東京消防庁などによると、寝室や幼児、高齢者がいる部屋にはなるべく家具を置かず、置く場合には家具が倒れてきそうな場所に寝ないようにする。また、家具の転倒によってドアが開かなくなるなど、避難の妨げになる場所には置かない。畳の上は家具が倒れやすいため、間に板を敷くなどの工夫が必要だという。部屋数に余裕がある場合には、ある部屋に家具をまとめて納戸として使い、他の部屋の危険度を下げる方法もある。
目黒教授は「家を建てた時に、家具を置くべき場所はおおよそ決まる。配置の工夫に加え、転倒防止に万全を期すには、やはり家具を壁などに固定するしかない。家具や住宅が固定器具を取り付けやすいように設計されることを標準化するなど、固定作業の手間を軽減して固定率を高めるべきだ」と訴えている。【福永方人】=おわり