【キッチナー(カナダ)=宮崎薫】20日に開幕したフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦・スケートカナダの男子ショートプログラム(SP)で、2位スタートとなった高橋大輔(関大大学院)。右ひざの手術で1年のブランクを経て、実戦復帰3戦目だ。
2週間前、4位に終わったNHK杯後、高橋はけがをする前の自分の映像を改めて見直したという。2007年世界選手権で銀メダルを獲得した時のフリー「オペラ座の怪人」、08年四大陸選手権を世界歴代最高得点で初優勝した時のフリー「ロミオとジュリエット」。そこに映る自分は、今と比べて「動きは硬いけど、力強かった」そうだ。
右ひざの手術から復帰までのリハビリで、股関節を中心に体の可動域が広がり、今までにない柔らかな動きを手に入れた。スローパートの表現力は増し、新たな自分の幅も見つけられた。
でも、今はそれだけでは物足りなくなった。「力強さと柔らかさ、両方とも自分のものに出来たら」――。そんなテーマも持って臨んだ今大会のSP。NHK杯で転倒したステップでは、リンクが北米特有のアイスホッケー仕様のサイズで狭いこともあり、「慎重になって」スピードは抑えていたものの、「自分なりには、徐々に(力強い滑りも)出来つつある」という手応えもつかんだ。
ケガの前の自分に戻るだけではなく、新たに手に入れた自分とどう融合させるか。来年2月に迫ったバンクーバー五輪を視野に、高橋の模索と挑戦が続く。
(2009年11月22日 読売新聞)