25日に徳島市内で突如、警察官を装ってキャッシュカードを奪おうとする電話が相次いだが、同日、この振り込め詐欺のグループの一員とみられる男を、徳島西署が緊急逮捕した。県内で警戒を始めて約3時間後に男を発見。奪ったカードで金を引き出す「出し子役」らしいという。どんな逮捕劇だったのか――。
(花房吾早子)
窃盗(払い出し盗)容疑で緊急逮捕されたのは、水戸市本町2丁目のとび職笹沼正人容疑者(22)。同署によると25日午後3時35分ごろ、徳島市内の無職女性(91)名義のキャッシュカードを使って、近くのコンビニの現金自動出入機(ATM)から現金100万円を引き出して盗んだ疑いが持たれている。笹沼容疑者は「他に仲間がいる」と話しているという。
「警察官を名乗る男から不審な電話が相次いでいる。警戒を」。25日正午ごろ、県警本部から各警察署に無線で伝えられた。徳島西署からは約20人の署員がコンビニや金融機関のATMをパトロール。午後3時、刑事課の巡査長(27)も捜査車両で出発した。
県道を走っていると、コンビニの中でATMの前に立つ男が目に入った。駐車場に車を止め、入り口付近で様子をうかがった。帽子を目深にかぶった若い男。「怪しい」と思ったという。
「すみません、警察です」。入り口から出てきた男に声をかけると、急に走り出した。約100メートル行った所で男が転倒し、ポケットから紙幣が飛び出し地面に広がった。「おまえ、出し子か」。男はうなずいた。取り調べの上、午後7時半ごろ緊急逮捕した。
被害に遭った女性宅には、この日午後2時ごろ別の男から電話がかかっていた。「福岡県警の警察官です。あなたの口座から50万円引き出されています。犯人グループを捕まえました。新しいカードに作り替えなければいけないので、古いカードを回収しに伺います」という内容。
数分後、金融機関の職員を名乗る男がカードを受け取りに来たという。女性は、警察から連絡をもらうまで、詐欺に気付いていなかった。