木枠にはめられた2枚のガラス。金づちで強くたたくと、一方は粉々に砕け散り、飛散防止フィルムを張ったもう一方は割れ方が限定的で破片も出ない。「こんなに差が出るのか」。参加者たちは驚きの声を上げる。
東京都練馬区の大工や左官など建築関係の職人でつくるボランティア団体「建築防災くまさんの会」は毎月、地震時の家具による被害を防ぐための講習会を区内各地で実施している。職人の技術を生かし、家具を壁などに固定する方法やガラス飛散防止フィルムの張り方を解説。住民にも実践してもらい、備えの重要性を訴えている。
地震の被害では、割れたガラスや食器でけがをするケースも多いため、割れ物の対策も重要だ。同会代表の内装業、松井郁夫さん(68)によると、ガラス飛散防止フィルムの張り方は、まず、台所用洗剤を水で20倍程度に薄めた水溶液を霧吹きなどでガラスに満遍なく噴射。ガラスにフィルムの接着面を当て、ゴム製やプラスチック製のへらで中心部から四方へ水分や空気を押し出しながら張り付ける。水溶液はフィルムを傷つけないための緩衝材の役割を果たすという。
ガラスからはみ出たフィルムはカッターで切るが、フィルムは熱で膨張するため、ガラスの縁から3~4ミリのすき間が空くよう小さめに切るのがコツだ。ガラスとフィルムの間の水分が抜けて完全に接着するには1週間程度かかるという。フィルムはホームセンターなどで、サイズによって1枚600~2000円程度で販売されている。
松井さんは「フィルムをうまく張るのはプロでも難しいので、まずは食器棚などの小さいガラスで練習してほしい。窓など大きなガラスの場合は、内装業者や工務店に依頼するのも手だ」とアドバイスする。
一方、東京消防庁によると、棚から食器などが飛び出すのを防ぐため、扉の取っ手に開放防止器具を取り付ける方法もある。また、天井との間に入れる突っ張り棒と、底部に差し込むストッパーを併用すれば棚を固定でき、重い物は下段に収納する工夫も有効だという。【福永方人】=つづく
毎日新聞 2009年11月18日 東京朝刊