9月14日10時52分配信 河北新報
岐阜県の防災ヘリ墜落事故で中高年登山者の遭難多発がクローズアップされているが、東北の山や湿原では中高年登山者らが心筋梗塞(こうそく)などの急病で倒れるケースが目立っている。尾瀬の福島県側では8月初めからの1カ月間で急病に陥った6人がドクターヘリなどで搬送され、うち70代と50代の男性2人が心筋梗塞で亡くなった。無理な日程による睡眠不足などが指摘されたケースもあり、関係者は「体調管理に十分注意して」と呼び掛けている。
今月5日、燧ケ岳(2356メートル)の登山を終えた福島市の会社員男性(53)が、尾瀬御池ロッジ(桧枝岐村)近くの休憩所で心筋梗塞を起こし意識不明になった。
村の職員が自動体外式除細動器(AED)を使って応急処置した後、ドクターヘリで福島市の福島県立医大に救急搬送。一命は取り留めた。
男性は4日まで仕事し、5日午前0時に車で自宅を出発。登山口で2時間ほど仮眠しただけで、その後は7時間近く歩いたという。飲み物は持っていたものの補給が十分でなく、睡眠不足と脱水症状が原因で心筋梗塞を起こしたとみられている。
地元の消防署や桧枝岐村によると8月以降、急病による尾瀬への救急出動がかなり多くなった。40代から70代の6人(男性5人、女性1人)がヘリや救急車で運ばれ、うち3人が心筋梗塞で、ほかは貧血と熱中症、体調不良だった。
中高年がヘリで救助される例は最近、他県でも多い。急病だけではないものの山岳救助出動件数のうち対象者が50代以上は今年4月以降、岩手県で27件中26件、秋田県で26件中23件、山形県で24件中22件に上る。
山での事故はこれまで転倒による骨折やねんざが大半だった。だが中高年ハイカーらの急病の増加で、地元は懸念を強めている。心筋梗塞などは一刻を争うだけに、御池ロッジ支配人の星睦彦さん(39)は「水や食べ物を十分に用意し、体調管理を徹底してほしい」と注意を促す。