現場から記者リポート:乳幼児の事故防止 起きない環境作りが第一 /滋賀

6月23日16時1分配信 毎日新聞

 ◇危険は成長によって変化 救急車より応急処置
 地域で子育てサポート活動を続けている「大津市ファミリーサポートセンター」と日本赤十字社が乳幼児の事故を予防するための講習会を開いている。記者の長男は現在、1歳7カ月。よちよちと歩き回って思わぬところに頭をぶつけ、よくたんこぶをつくっている。講師は幼児安全法指導員を務める大津赤十字病院の看護師。日々急患に対処してきた体験談に記者は思わずメモを走らせた。【安部拓輝】
 日本赤十字社によると、1~4歳で死亡した子どもの死因は1960年以降ずっと「不慮の事故」が第1位。打撲や切り傷、やけどなどのけがをしやすい場所は家族が集う居間やリビングなど家の中だという。
 第1回の講師は岡本美佐江・同病院NICU(新生児集中治療室)師長。救急外来にも勤務する岡本さんは「最近も、転倒して傷口が割れ、何針も縫うけがをした幼児が連続で運ばれてきた」と話す。昨年は、食卓につかまり立ちした幼児がみそ汁の鍋に手をかけ大やけどしたケースもあったという。
 記者の長男も先日、化粧台の上にあったポーチから赤色のチークを見つけて口に入れ、大慌てした。「見えない場所に」と思っても、背伸びをすると予想以上にリーチが長い。3歳の娘がいるという大津市大江の西條舞子さんは「踏み台に乗ることを覚えると、いろんなところに手が届く。バランスが悪くても、転ぶイメージがないから危ない」と話す。
 応急処置も肝心だ。みそ汁をかぶった事例では、保護者がすぐに水や氷で冷やしていたおかげで水ほうが大きくならず、重症にならずにすんだという。出血した際には、大きめのハンカチやパンティーストッキングが止血に役立つ。傷口には厚めのガーゼ。紙おむつでも代用できるという。岡本さんは「慌てて救急車を呼ぶ前にまず応急処置。対処法が思いつくよう事前に練習を」と呼びかける。
 しかし、まずは事故が起こらない環境作りが第一だ。岡本さんは「危険の中身は子どもの成長によって変わることを意識して」と話す。1歳前後は体全体の中で頭が重くて転倒が多い。友だちと遊ぶようになる2歳ごろは、体のコントロールがきかないので失敗することも。3歳になると、「自分でしたい」という気持ちが強くなってライターやカミソリなどにも関心を持つ--といった具合だ。
 子どもが安全な遊びを身につけるには何が必要か。岡本さんは「まずは大人が認めてあげることが大事」という。「一つずつ危険をクリアするたびに『よくできたね』とほめてあげる。『言うことを聞かせる』というよりも、子どもの目線で一緒に達成感を味わうことがしつけへの近道」と話している。
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 ◆家庭での危険チェック◆
・乳児のベッドの枕元にぬいぐるみを置くと、顔に倒れて窒息の恐れも
・加湿器、電気ポット、炊飯器などは蒸気でやけどの可能性
・タンスの上の記念写真は、つかまり立ちして揺れると、落下の危険性
・ちゃぶ台にタバコや薬、電池や化粧品を放置すると、誤飲のもと
・食卓のテーブルクロスは、引っ張ると、卓上の熱湯がこぼれることも
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 ◇大津市ファミリーサポートセンター
 地域で登録している「おねがい会員」と「まかせて会員」を橋渡しする。国が94年に始めた子育て支援の制度で、大津市では、市社会福祉協議会が委託を受けて運営している。「幼児安全法講習」は昨年に続き2回目。23日の第3回は子どもの病気と手当て、7月9日の最終回はAED(自動体外式除細動器)の使い方。両日ともに午前10時~正午。一般参加も可能で、託児は20人まで。問い合わせは同市浜大津4、明日都浜大津5階の同センター(077・511・3150)。

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