独居高齢者、熱中症で衰弱 異変察知し住民ら救出

 伊賀市中心部で今月初め、独り暮らしの女性(87)が自宅で動けなくなり、2日後に衰弱した状態で助け出されるという事案があった。救出のきっかけは、日ごろ付き合いのある近隣住民が女性の異変に気付いたことだった。

 「伊賀市内で独り暮らしをする姉と連絡が取れない」。11日午後2時半ごろ、県外に住む女性の妹から伊賀署に通報が入った。署員2人が駆け付け、鍵を壊し家に入ると、居間で女性が倒れていた。熱中症で衰弱し意識がもうろうとしていたため、救急車を呼んで近くの病院へ搬送した。

 通報前、異変を察知したのは、近くに住む女性住民(48)だった。女性宅のポストには2日分の新聞がたまり、さらに雨戸も開いていなかった。不審に思った住民が外から声を掛けると、いつも元気なはずの女性が弱々しい返事しかしなかったため、女性の妹に電話で連絡。その後、妹が署に通報した。

 女性は以前、台所で滑って転倒し、足腰を痛めていた。救出2日前から症状が悪化して1歩も動けなくなり、水も食事も取れない状態だった。家にはエアコンもなく締め切っていたため、発見時は蒸し暑かったという。幸い女性は治療により回復したが、同署は「さらに発見が遅れれば、命が危なかったかもしれない」とみる。

 高齢者の生活支援に取り組む市社会福祉協議会の平井俊圭事務局長は「隣近所が互いのことを知っていたことが大きい」と指摘する。今回のケースでは、住民同士が互いの家を行き来するなど深い近所付き合いがあった。異変に気付いた住民も「日ごろ顔を合わせるので、女性の足腰が悪いのが気になっていた」と振り返っている。

 一方で、伊賀署によると、独居高齢者が死亡して見つかる「孤独死」は、管内で毎年十数件ある。連絡が取れずに訪れた親族や民生委員らが見つけることが多いという。

 平井事務局長は「近所の人たちが食事のおすそわけをするなど、気軽な付き合いを続けてほしい。離れて暮らす家族も、毎日電話をすれば簡単に健康状態を確認できる」と助言している。

 (河北彬光)

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