◆強風が吹きやすい春。我が身を守るには。
◇範囲狭いが軽視禁物 台風並み威力の場合も
◇低気圧接近…注意報、警報に注意を
「春の嵐」という言葉があるように、春は強風が吹きやすい季節。しかし、台風のように広い範囲に被害をもたらすことが少ないこともあり、その脅威は軽視されがちだ。
3月20日、北九州市内の無人有料駐車場で、女性が首から血を流して倒れているのが見つかった。この日の同市の最大瞬間風速は23・5メートル。女性は強風で壊れた料金支払機の屋根に直撃され、死亡したとみられている。
また、4月2日には千葉市で最大瞬間風速32・9メートル、東京都江戸川区で同28・4メートルを観測するなど、関東地方南部を中心に強風が吹き荒れた。空の便に欠航が相次ぎ、鉄道のダイヤも大幅に乱れた。神奈川、千葉両県のまとめによると、転倒や飛散物にあたるなどして計30人以上がけがをしたという。
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春の強風というと、春一番が真っ先に思い浮かぶ。気象庁によると、春一番は日本海を発達しながら通過する低気圧に向かって、南から暖かい空気が流れ込んで起きる。春に起こる強風のメカニズムは基本的に、春一番と同じだという。春一番は元々漁師などに恐れられていた風で、言葉が生まれた場所との説がある長崎県壱岐市によると、16世紀後半に漁師53人が春一番とみられる強風で犠牲になった記録が残っているという。
強風災害の調査などを行う有識者の集まりである風災害研究会がまとめた「瞬間風速と人や街の様子との関係」によると、瞬間風速10メートルで傘がさせず、樹木や電線が揺れ始める。同20メートルで転倒する人が出始め、看板やトタン板が外れ始める。同30メートルになると、何かにつかまっていないと立っていられず、屋根瓦が飛散したり、自転車置き場などのひさしが変形する。
同研究会の会員で、九州工業大の木村吉郎准教授(風工学)は「瞬間風速20~30メートルの風は、大型のテントを20トン以上の力で浮き上がらせることもある」と指摘する。同研究会は風の脅威を広く知らせるため、風災害に関する防災フォーラムを開いているが、木村准教授は「被害を受ける場所が限定的なためか、怖さをあまり意識していない人が多い」と感じるという。
気象庁天気相談所は「気圧配置を見れば、早い段階から強風が吹くのは予測可能。春の嵐は3~4月が中心だが、メイストーム(5月の嵐)という言葉もある。強風注意報(おおむね平均風速10メートル以上)や暴風警報(同20メートル以上)に注意を払ってほしい」と呼びかける。木村准教授も「気圧配置によっては、春でも台風並みの強風が吹くこともある。とにかく被害に遭わないためには風を甘く見ないことだ」と訴えている。【飯田和樹】