「バンクーバー五輪・女子団体追い抜き」(27日)
日本、わずか0秒02差の銀メダル‐。田畑真紀(35)、穂積雅子(23)=ともにダイチ、小平奈緒(23)=相沢病院=の寅(とら)年トリオで臨んだ“氷上のタイガース娘”は、準決勝でポーランドを0秒19差で下し、決勝でドイツに最後の半周で逆転を許し、100分の2秒差で銀メダルを獲得。スピードスケート女子のメダルは、98年長野五輪女子500メートル銅メダルの岡崎朋美以来で、銀はスピード女子史上最高成績となった。
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逃げる日本。迫るドイツ。金メダルをかけた決勝。大歓声と悲鳴の中を、両チームがほぼ並んでゴールした。田畑が、穂積が、小平が、電光掲示板に目を向けた。2位‐。うなだれるように下を向いた。リンクを1周して、ようやく顔を上げた。笑顔を作って歓声に手を振った。
金メダルに0秒02届かなかった。「悔しい思いが最初に浮かんだ。自分たちの力を出し切ったと思ったときに、相手が強かったと感じた。これが精いっぱいという満足感があった」。若きエースの小平は、複雑な胸中を口にした。
日本が先行した。4周滑って、最大1秒72差をつけた。残り1周半でラップが落ちた。差は徐々に詰まった。半周を残して、リードは0秒74。このままの展開なら、確実に金だった。
敗戦直後、場内にはスロー映像が何度も流れた。横一線でゴールするはずが、穂積がわずかに遅れた。ほんの少し前に、相手はゴールラインを滑り抜けていた。「私の足がもうちょっと長ければ…」。穂積は嘆いた。
準備なしで臨んだ前回のトリノは3位決定戦で最後尾を滑る選手が転倒した。メダルを狙った今回。調整方法の異なるチームの壁を越えて、昨夏から練習を重ねた。複数のメンバーをテストして、選ばれた最強メンバーが寅年の3人だった。
唯一、トリノの苦い経験を知る田畑がチームリーダーになった。「感じるままに話し合ってきた。意見も出し合った。このメンバーなら指示を出すこともなかった」と固いきずなを口にした。穂積も「田畑さんが4年間、築いてくれた道をメダルという形で恩返しできた」と目を潤ませれば、小平は「純粋にスケートに対する思いが強い。疲れていても頑張ろうと自然に感じられる。だれも弱気にならないすごいチーム」と振り返った。
金を逃した悔しさと、銀に輝いた達成感。レースから30分後のメダルセレモニーでは、3人が手をつないで表彰台に飛び乗った。全員が笑顔だった。「ものすごく悔しかった。でも、それも消えた。やっぱりメダルがほしかった。夢みたい」。3人の気持ちを田畑が代弁し、誇らしげに銀メダルを掲げた。