裁判員裁判:初の性犯罪審理 被告に懲役10年求刑 /宮城

◇弁護側、情状酌量求め結審
 県内で初めて性犯罪を審理する仙台地裁(川本清巌裁判長)での裁判員裁判は19日、被告人質問や論告求刑を行った。被告人質問では、男性裁判員が被告に「当たり前の答えしか返ってこない。むかつくんですよね」と声を荒らげ、裁判長が制止する場面もあった。検察側は「被害者の苦痛は重大」として懲役10年を求刑。弁護側は「更生に励んでいる」などと情状酌量を求め結審した。判決は20日午後3時半の予定。【鈴木一也、伊藤絵理子、垂水友里香】

 ◆被告人質問

 ◇被告を非難、裁判長制止も
 強姦(ごうかん)致傷罪に問われたのは大崎市三本木坂本、トラック運転手、結城一彦被告(39)。起訴状によると昨年10月2日夜、黒川郡内の路上で、10代女性を自転車ごと押し倒して手首を骨折させ、性的暴行を加えたとされる。

 19日は裁判員の被告人質問から始まった。男性4人、女性2人のうち男性全員が質問。被害者の自転車が転倒した詳しい状況を確認するため、「被害者が(骨折した)右手をかばう様子はあったか」「被告は自転車の前に立ちはだかったのか」などと尋ねた。

 また、被告の更生可能性に注目した裁判員は、慎重に言葉を選びながら「昨日は真っ当になりたいと言っていましたが、どうすればいいと思いますか」と質問。結城被告は「なぜ事件を起こしたか考え直すべきだと思います」と答えた。

 法廷内の注目を集めたのは、一番左に座る裁判員の質問だった。被告が過去に性犯罪で服役したことに触れ「刑は長かったですか」「長かったです」「この裁判は」「長く感じます」とやり取り。「重大なことをした」と話す被告に、「本当ですか。運が悪かったとか思いませんか」と畳み掛け、「『反省してます』とか、当たり前の答えしか返ってこない」と非難した。

 さらに、弁護側の「首を両手で絞めたのではなく左手で圧迫しただけ」という主張に対し、「片手か両手かなんて関係ない。この場で聞いていてむかつくんですよね」と憤り、裁判長から「その辺で」と制止された。

 ◆証人尋問

 ◇被告の父証言
 続いて結城被告の父親(78)が証言台に立った。弁護側の質問に、前回の事件の示談金や借金を肩代わりし、結城被告の更生に協力したことを証言。一方、検察側から「被告の更生のために具体的にできることは」と問われ、「ありません」と、か細い声で答えた。

 ◆論告求刑

 ◇「恐怖で精神的苦痛は重大」
 争点は(1)自転車の前かごをつかみ押し倒したか(2)首を両手で絞め付けたか--という犯行時の行動。検察側は「被害者がうそをつく理由はなく、被告の供述より格段に信用できる」と指摘。「被害者は殺されるのではという恐怖を味わいながら暴行された。精神的苦痛は重大」とし、懲役10年を求刑した。

 弁護側は、被告人質問での裁判員の「片手か両手かなんて関係ない」という発言を受け、「細かい、くどいと思われるかもしれませんが、真相解明という刑事裁判のあるべき形としてご理解下さい」と前置き。「被害者の首にあざはなく、左手で圧迫しただけという被告の供述は信用できる」と訴えた。

 「人間として卑劣なことをした。申し訳ありませんでした」。結城被告が最終陳述で頭を下げると、裁判員はその真意を測るようにじっと被告を見つめていた。

 結審後、裁判官と裁判員が非公開の評議に入った。20日も午前10時から評議を行う。判決傍聴希望者への整理券の配布は午後2時10分から同50分、地裁東側玄関前で。

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