介護施設での事故、転倒が6割-三菱総研調べ

9月25日13時40分配信 医療介護CBニュース

 三菱総合研究所はこのほど、介護事故の実態と対応策についての調査研究報告書を公表した。それによると、介護施設における事故の6割は転倒だった。

 調査は厚生労働省の2008年度老人保健健康増進等事業の一環として行われた。介護サービスでは、医療分野のような事故やヒヤリ・ハット情報の収集・分析が全国規模で行われていないことから、調査は将来的な全国規模での介護事故の情報収集・分析に向けた仕組みや方法の検討に役立てることを目的としている。
 同研究所が開発した「事故情報収集ツール」を使い、昨年の11-12月に全国の1805市区町村に対し調査を実施。889の市区町村から回答があった(回答率49.3%)。
 それによると、昨年4-9月の半年間に介護施設において発生した8541件の事故事例が報告された。
 これをサービス種別に見ると、老人福祉施設が48.8%と最多で、以下は老人保健施設30.1%、短期入所生活介護15.4%、介護療養型医療施設2.1%、短期入所療養介護1.5%と続いている。
 ただ同研究所は、母数となる施設数や利用者数に差があるほか、実際の事故発生数と報告数は同一ではなく、安全意識の高い施設ほど積極的に報告することもあり得ることから、これが必ずしも老人福祉施設の事故発生率が高いことを意味してはいないとしている。
 事故報告のあった利用者の平均年齢は86.43歳で、要介護3-5の利用者が全体の63.8%を占めた。事故の発生場所は「居室・静養室(ベッド周辺)」が35.8%と最も多く、「居室・静養室(ベッド周辺以外)」の11.3%を合わせると47.1%を占めた。
 事故は「けがおよび死亡事故」が全体の97.1%。内訳を見ると、「転倒」が59.3%と最も多く、次いで「転落」11.5%、「誤えん」3.5%、「衝突」2.3%となった。
 「けがおよび死亡事故」の被害状況は、全体の55.1%が「骨折」だった。次いで「裂傷・擦過傷」11.9%、「打撲・ねんざ・脱きゅう」11.6%、「窒息」2.4%と続いた。
 被害の程度は、「通院」が43.5%と最多で、「入院」が35.3%でこれに続いた。「死亡」は2.7%だった。
 「けがおよび死亡事故」の発生場面は、「休息・娯楽」中が19.7%と最も多く、以下は「排せつ」15.1%、「食事(水分摂取含む)」7.3%と続く。
 事故発生時に心肺蘇生などの救急救命を実施したかどうかを尋ねたところ、実施したのは全体の5.5%。これを事故内容別に見ると、「誤えん」が66.2%と最多で、「異食」23.1%がこれに次いだ。
 事故発生による損害賠償などが生じたかどうかについては、「無回答」が57.0%だったが、回答があったうち「損害賠償あり」の事例は10.1%だった。
 また、事故発生後の再発防止に向けた手順書の作成や見直しの有無について尋ねたところ、「あり」は11.9%で、「なし」が全体の83.7%を占めた。
 また、特に発生が目立つ「転倒による骨折の事例」では、被害のあった体の部位は「下肢」が65.7%を占めた。被害の程度は「入院」が63.9%と最多で、「通院」が31.6%でこれに続いた。
 重篤な被害につながる可能性の高い「誤えん」事故における被害の程度は、「死亡」が39.1%と最多で、次いで「入院」35.3%、「通院」10.4%、「受診なし」2.4%となった。

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